除草剤の播種前雑草処理を用いたケンタッキーブルーグラス放牧草地の造成法

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要約

ケンタッキーブルーグラスを、除草剤の播種前雑草処理を用いて8月に30kg/ha播種し、ケンブリッジローラで鎮圧すると安定的に造成できる。この方法でシロクローバと混播すると、翌年7月からは毎月ヘクタール当たり80-100CD前後の牧養力を期待できる。

  • 担当:北海道農業試験場・草地部・草地管理・地力研究室
  • 連絡先:011-857-9235
  • 部会名:畜産・草地(草地)
  • 専門:栽培
  • 対象:牧草類
  • 分類:普及

背景・ねらい

蹄傷の著しい軽種馬等の放牧草地では、根張りによる土壌保全機能に優れるケンタッキーブルーグラス(KB)が基幹草種として望まれている。しかし、本草種は初期生育が劣るため、長草型草種に比べて造成時に雑草に侵入されやすいという難点を有するので、これを克服し、確実に造成するための条件を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 北海道において高い雑草発生抑止効果で知られる除草剤の播種前雑草処理(播種床造成後一定期間放置して発生した雑草に対し、播種日の当日~10日前の期間中に除草剤を散布する方法)をKB放牧草地の造成に導入する(図1)。
  • 芝生の造成では100kg/ha以上の大量の播種が行われるが、播種量が多いと面積当たりの茎数や根重が増大する反面、一茎重や個体当たりの根重の発達が抑制される(図2)。
  • 芝生の造成では鎮圧にしばしば平滑ローラが使用されるが、播種量が30kg/ha程度と少ない条件における発芽にはケンブリッジローラの方が確実である(図3)。
  • KBの発芽定着を促進するには除草剤の播種前雑草処理が有効である。除草剤処理の代わりに播種当年の掃除刈りを行っても、エゾノギシギシなどの多年生雑草の防除は困難であり、播種翌年の早春における牧草の乾物重も低下する(図4)。
  • 本法を用いてKBを8月に30kg/ha播種し、シロクローバを1kg/ha混播すると、播種翌年から日乾物重増加速度3-4g/m2/日の生産性が期待できる。播種翌年の放牧開始は、地下茎の発達した7月には可能で、以後の牧養力は毎月80-100CD程度である(図5)。

成果の活用面・留意点

  • 著しい蹄傷等に対する耐性が求められる草地に対し、早期に地下部の充実を図る場合の造成に適用できる。
  • 播種量、播種時期、生産性を示す値は北海道中央地帯の褐色火山性土における実験結果に基づく。

平成12年度北海道農業試験会議における課題名および区分
課題名:ケンタッキーブルーグラスを基幹とする放牧草地の造成法(指導参考)

 

具体的データ

図1.除草剤の播種前雑草処理の作業工程

 

図2.播種量がケンタッキーブルーグラス草地の地上部および地下部の発達におよぼず影響

 

図3.鎮圧方法がケンタッキーブルーグラスの発芽数におよぼす影響

 

図4.除草剤の播種前雑草処理と掃除刈りの有無が播種翌春における牧草の乾物量におよぼす影響

 

図5.除草剤の播種前雑草処理によって造成されたケンタッキーブルーグラス・シロクローバ根播草地の日乾物重増加速度と牧養力

 

その他

  • 研究課題名:北海道における持続型放牧草地の植生管理技術の開発
  • 予算区分 :経常・畜産対応研究(自給飼料基盤)
  • 研究期間 :平成12年度(平成9~15年)
  • 研究担当者:三枝俊哉・手島茂樹・高橋 俊・小川恭男
  • 発表論文等:
    1.三枝俊哉・手島茂樹・小川恭男:北海道におけるケンタッキーブルーグラス草地の造成技術1.
         短期造成法と利用管理による優占化促進法,日草誌,45(別),68-69(1999)
    2.三枝俊哉・手島茂樹・小川恭男・高橋 俊:北海道におけるケンタッキーブルーグラス草地の造成技術2.
         除草剤処理、鎮圧方法および掃除刈りがケンタッキーブルーグラスの発芽と定着におよぼす影響,
         日草誌,46(別),198-199(2000)