チモシー優占草地からケンタッキーブルーグラス優占草地への誘導法

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要約

ケンタッキーブルーグラス(KB)優占草地を成立させるための技術として、チモシー・KB混播草地を放牧しながらKB優占草地に誘導する方法を提案する。10cm程度の短い草丈で頻繁に放牧する方法により造成後数年間でKB優占草地に誘導できる。また、30cm前後の長い草丈で輪換放牧する方法により、誘導の速度を遅くすることができる。

  • 担当:北海道農業試験場・草地部・草地管理・地力研究室
  • 連絡先:011-857-9235
  • 部会名:畜産・草地(草地)
  • 専門:栽培
  • 対象:牧草類
  • 分類:普及

背景・ねらい

立地条件の不良な肉牛等の放牧草地における省力・低コスト管理には、永続性の高いケンタッキーブルーグラス(KB)の有効性が指摘されている。しかし、初期生育の遅いKB草地の造成には、雑草発生防止のための除草剤処理や播種翌年における放牧圧の軽減を要する。播種翌年に放牧圧の軽減を行うことなく、種子と除草剤に係る造成経費を低減しつつ、KB優占草地を成立させるため、慣行法による造成が容易で播種翌年に高い生産性を期待できるチモシー(TY)を主体とするKB混播草地を最初に造成し、放牧しながらKB優占草地に誘導する利用方法を提案する。

成果の内容・特徴

  • チモシー(TY)・KB混播草地において、異なる放牧管理を想定した多回刈り条件によってKB茎数の増大の程度を比較すると、低草高の定置放牧を想定した刈り取り管理(刈り取り時草丈10cm・刈り高5cm)の条件でKBの茎数は最も速やかに増大し(図1a、図2 ○印)、長めの利用草丈とゆるやかな放牧強度による輪換放牧を想定した刈り取り管理(刈り取り時草丈30cm・刈り高10cm)がこれに次ぐ(図1c、図2 ▲印)。また、これらの場合にはTYの茎数密度も良好である(図2)。
  • 農家と公共牧場のKBの混在したTY草地における被度調査の結果によれば、低草高の定置放牧条件では、造成後数年でKBが優占する。一方、長めの草丈による輪換放牧条件では、KBの優占にはさらに数年の期間を要する(図3)。このことは、上記の多回刈り条件で得られた知見と一致する。
  • 本誘導法の家畜生産性を評価するため、造成したTY・KB混播草地において、上記の定置放牧に準ずる利用草丈10cmを目安とした2牧区輪換放牧と利用草丈30cmの目安とした5-10牧区による輪換放牧を行うと、播種翌年の延べ放牧頭数およびヘクタール当たり増体量はいずれの放牧方法でも、最初から造成したKB・WC混播草地における播種翌年の水準を大きく上回り、同3-4年目の水準と同等またはそれ以上となる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 放牧草地の有効利用や造成コストの低減を重視した草地造成に活用できる。また、前植生の影響でKBが侵入したTY草地にも適用できる。
  • 本法によるKB草地への移行には年数を要する。

平成12年度北海道農業試験会議における課題名および区分
課題名:ケンタッキーブルーグラスを基幹とする放牧草地の造成法(指導参考)

 

具体的データ

図1.異なる放牧管理を想定した刈り取り処理の概念図

 

 

図2.刈り取り時の草丈と刈り高がチモシー・ケンタッキーブルーグラス・シロクローバ根播草地における両草種の茎数におよぼす影響

 

 

図3.造成後経過年数の異なる草地におけるケンタッキーブルーグラスの被度

 

 

表1.チモシー(TY)・ケンタッキーブルーグラス(KB)根播草地からKB優占草地への誘導法による播種翌年の家畜生産性

その他

  • 研究課題名:北海道における持続型放牧草地の植生管理技術の開発
  • 予算区分 :経常・畜産対応研究(自給飼料基盤)
  • 研究期間 :平成12年度(平成9~15年)
  • 研究担当者:三枝俊哉・手島茂樹・小川恭男・高橋 俊
  • 発表論文等:三枝俊哉・手島茂樹・小川恭男:北海道におけるケンタッキーブルーグラス草地の造成技術1.
                      短期造成法と利用管理による優占化促進法,日草誌,45(別),68-69(1999)