混播適性に優れるアカクローバ新品種「ナツユウ」

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要約

2番草の再生が穏やかな早生のアカクローバ「ナツユウ」は、越冬性および永続性に優れるため、北海道一円を栽培適地として、チモシーの早生から中生品種との混播栽培を中心に、競合力の小さな品種として利用できる。

  • 担当:北海道農業試験場・草地部・マメ科牧草育種研究室
  • 連絡先:011-857-9272
  • 部会名:畜産・草地(草地)
  • 専門:育種
  • 対象:牧草類
  • 分類:普及

背景・ねらい

北海道の基幹牧草であるチモシーの品種の多様化に伴い、混播草地において競合力の強いアカクローバがチモシーを抑圧する問題が顕在化してきたが、その要因として、現状の優良品種が競合に強い多収品種に偏っていることが指摘されている。混播適性に関するアカクローバ側の問題点は、チモシーの生育が緩慢な2番草生育期にアカクローバが旺盛に生育してチモシーを抑圧することおよび永続性に劣るアカクローバがその後消失して草地全体が大きく衰退することである。そこで、2番草におけるチモシーとの競合力および永続性に関して改良することとした。

成果の内容・特徴

  • 開花始日は「ホクセキ」並であり、早生に属する。「ホクセキ」に比べ2番草の開花程度がやや小さい。晩生に属する「クラノ」より開花程度は大きい。
  • 耐寒性特性検定の結果は、「ホクセキ」を「中」として「やや強」である。萌芽良否、早春草勢は「ホクセキ」並かやや優れ、「クラノより優れる。以上より、越冬性は「ホクセキ」、「クラノ」より優れる。
  • 永続性は、「ホクセキ」並で、「クラノ」より優れる。
  • 混播試験におけるチモシーの収量とマメ科率から判断して、チモシーに対する競合力は「ホクセキ」より小さく、「クラノ」より大きい。チモシー主体の管理を目的とした場合、「ホクセキ」に比べ、チモシー収量が高く、マメ科率は低く推移するため、混播適性は「ホクセキ」より優れる。
  • うどんこ病には「ホクセキ」よりやや強く、「クラノ」より強い。菌核病には「ホクセキ」並かやや強く、黒葉枯病には「ホクセキ」並かやや弱い。その他の病害は「ホクセキ」並である。
  • 単播試験における合計乾物収量は「ホクセキ」比108であり、混播試験では99である。収量性は「ホクセキ」並である。「クラノ」との比較では収量性はやや高い。
  • 飼料成分は「ホクセキ」並である。
  • 2ヶ年平均の採種量は、「ホクセキ」26.2kg/10aに対し、24.6kg/10aであり、採種性は「ホクセキ」並である。
  • 「ホクセキ」に比べ、混播適性と越冬性に優れ、「クラノ」に比べ、越冬性、永続性および収量性に優れる。既存のアカクローバ早生品種の中では競合力が小さく、チモシー主体の管理を行うのに有利である。

成果の活用面・留意点

  • 北海道一円を普及対象地域とし、普及見込み面積は、60,000haである。
  • チモシーの植生維持を優先する場合において、チモシーの早生から中生品種に対し、競合力の穏やかな早生品種として利用する。

平成12年度北海道農業試験会議における課題名および区分
課題名:アカクローバ新品種候補系統「ナツユウ」(普及奨励)

具体的データ

表1.「ナツユウ」の開花特性

 

表2.混播試験における「ナツユウ」の収量特性

 

表3.「ナツユウ」の形態的特性、越冬性、被度、耐倒伏性および耐病性等

 

その他

  • 研究課題名:アカクローバの永続性品種の育成
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年度(平成6年~15年)
  • 研究担当者:我有 満、磯部祥子、内山和宏、眞木芳助、植田精一、山口秀和、松浦正宏、澤井 晃
  • 研究課題名:現地選抜を利用した耐冬性強化育種
  • 予算区分:共同
  • 研究期間:平成12年度(平成9年~13年)
  • 研究担当者:山川政明、藤井弘毅、牧野 司、堤 光昭、竹田芳彦、中島和彦、澤田嘉昭