アルファルファ単播草地へのスラリー多量施用の弊害
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要約
アルファルファ単播草地へのスラリーの追肥としての多量施用は、倒伏の増加と乾物収量の減少(年間24t/10a施用で18%)につながる。また、アルファルファの株数の減少(12t/10a施用で22%)と雑草侵入の増加により、草地の荒廃を招く。
- キーワード:牧草、アルファルファ、単播、家畜ふん尿、スラリー
- 担当:北農研・総合研究部・総合研究第3チーム
- 連絡先:0155-62-9286
- 区分:北海道農業・畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
安全で良質な自給粗飼料の生産をめざして、アルファルファの単播栽培の拡大が求められている。マメ科牧草であるアルファルファの単播栽培では、窒素成分を
含む追肥は施用しないことが一般的であるが、生産現場では家畜糞尿を施用している例が少なくない。そこで、表面散布によるスラリー(液状きゅう肥、表1、表2)の施用量の増加が、アルファルファ単播草地に与える影響を明らかにするため、生育、収量及び飼料成分を検討する。
成果の内容・特徴
- スラリー施用量の増加により、土壌中の置換性カリウムと硝酸態窒素は増加する。置換性カリウムは地表近くに多く蓄積し、0~10cm深の土壌中の含量は、年間12tの施用で33.2mgK2O/100g、24tで54.6mgK2O/100gに上昇する。硝酸態窒素は30cmまでの全層に蓄積し、12t施用で1.67~2.83mgN/100g、24t施用で2.13~3.77mgN/100gである(図1)。
- スラリー施用量の増加は、倒伏の程度に影響する。1番草では、化成肥料区で倒伏程度の評点平均が1.3であるのに対し、12t施用で4.7、24t施用で7.0に増加する。年間のアルファルファの乾物収量は12t施用で約12%、24t施用で約18%減少する(表3)。
- スラリー施用によりアルファルファの株数が減少する(12t施用で減少率約22%)。また、雑草の侵入が増加する。これらは、草地の荒廃・衰退と維持年限の短縮を招く可能性が高い(表3)
- 飼料成分では、K/(Mg+Ca)当量比は0.34~1.15の範囲にあり、スラリー施用により大きな変化は見られないが、硝酸態窒素の含量が上昇する。特に、2番草で早刈りを行う際に含量の上昇が著しく、施用量が多い場合は急性中毒の危険値とされる0.2%を超える(表4)。
成果の活用面・留意点
- アルファルファ単播草地へのスラリー追肥施用量を抑制するための基礎知見となる。
- アルファルファ単播草地へのスラリーの多量施用は、環境への影響が懸念されるため回避する。
具体的データ




その他
- 研究課題名:アルファルファ単播草地における液状きゅう肥の有効施用技術
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1999~2001年度
- 研究担当者:松村哲夫、新良力也、池田哲也、糸川信弘
- 発表論文等:松村・池田・糸川(2001)北草研報平成13年度研究会講要:9