春播小麦の根雪前播種栽培における越冬性の低下要因と改善

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

春播小麦を根雪前に播種する栽培法において、播種した種子は積雪下においても100%の発芽に達するが、雪腐病の被害や種子養分の消耗により越冬性が低下する。越冬性を高めるには、雪腐病防除薬剤の種子粉衣、大きい種子の利用が有効である。

  • キーワード:越冬性、大粒種子、根雪前播種、春播小麦、薬剤防除、雪腐病
  • 担当:北農研・総合研究部・総合研究第1チ-ム
  • 連絡先:011-857-9300
  • 区分:北海道農業・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

北海道の多雪地帯にて行われている春播小麦を根雪前に播種する栽培法は、従来の栽培法に比較して収量や品質の向上などのメリットがあるが、越冬性が不安定である。そこで、越冬性を向上させるために積雪下での発芽や越冬状態を調査し、改善方法について検討する。

成果の内容・特徴

  • 根雪前に播種した春播小麦は、積雪下で鞘葉、種子根を伸長させ、その後ほぼ100%の発芽に達するが、越冬する個体は大きく低下する(図1)。
  • 越冬途中には、雪腐小粒菌核病の発生が観察され、越冬個体率の低下に関与する。これには、雪腐病防除薬剤の種子への粉衣が有効である(図2)。
  • 積雪下での鞘葉などの生長や消雪後の起生には種子養分が必要であるため、種子が大きいほど越冬個体率が高い(図3)。根雪前播種栽培における越冬性の向上には、大粒種子の利用が有効である。

成果の活用面・留意点

  • 北海道多雪地帯の根雪前播種栽培法における越冬性向上技術の知見として有用である。
  • 春播小麦品種「ハルユタカ」に適用する。
  • 雪腐病防除薬剤の種子への粉衣は認可されていない(登録を準備中)。

具体的データ

図1 積雪下での発芽の様子と発芽部合の推移.

 

図2 雪腐病の発生と薬剤による防除効果

 

図3 根雪前播種における種子の大きさと越冬個体率

その他

  • 研究課題名:小麦の根雪前播種における環境保全的省力高能率耕耘・施肥技術の開発
  • 予算区分:麦緊急開発
  • 研究期間:2001~2004年度
  • 研究担当者:湯川智行、渡辺治郎、大下泰生、粟崎弘利
  • 発表論文等:湯川ら(2001)日作紀74(4):568-574