ダイズ耐冷性と関連するAPXアイソザイムの多型

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要約

  • 北海道産ダイズ品種には、APXアイソザイムに多型が認められ、APX1を欠失する品種群は耐冷性が強い。このアイソザイムの欠失は単因子劣性遺伝し、既知の耐冷性関連遺伝子とは独立して後代に伝達される。
  • キーワード:ダイズ、耐冷性、APX(アスコルビン酸ペルオキシダーゼ)、生理、育種
  • 担当:北農研・地域基盤研究部・冷害生理研究室
  • 連絡先:011-857-9312
  • 区分:北海道農業・基盤研究
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

イネやトウモロコシなどの夏作物の耐冷性に関して、活性酸素消去系酵素の重要性が指摘されている。しかしながらダイズにおいては報告がなく、耐冷性育種のための情報提供が求められている。
そこで、活性酸素消去に重要な役割を果たす酵素の一つであるアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)アイソザイムの多型と耐冷性との関係を検討する。

成果の内容・特徴

  • ダイズにおいては、電気泳動後活性染色した場合に強い活性をもつAPXアイソザイムが2つ認められ、北海道産品種の中で易動度の高いアイソザイム(APX1)を有するものと欠失するものが混在する(図1)。
  • 冷涼地である上士幌町の圃場で評価された、耐冷性の異なる20の品種・系統を多型に基づき分類すると、APX1を欠失する品種系統群が有意に耐冷性が強い(図1、表1)。
  • APX1を欠失する品種と発現している品種のF1は発現型を示し、F2集団は、3発現:1欠失、単粒系統法により養成されたF4集団は、9発現:7欠失に分離することから(表2)、欠失型が単因子劣性遺伝すると推定される。
  • APX1欠失は、円葉、有毛、褐毛等既知の耐冷性関連遺伝子とは強い遺伝的連鎖関係にないことから(表2)、この欠失を支配する遺伝子は新規の耐冷性遺伝子と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • APX多型に関する遺伝子座はマッピングすることも可能であり、ダイズ耐冷性に関するゲノム構造・機能研究に利用できる。
  • APX1の有無でAPX活性も異なることから、活性酸素とダイズ耐冷性との関係解明のための生理研究に利用できる。
  • APX1の育種における選抜マーカーとしての有用性に関しては、今後の研究で明らかにする必要がある。

具体的データ

図1.非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離されたAPXアイソザイム。

 

表1.APX1の多型に基づき分類した品種・系統のグループ間の耐冷性とAPX活性の比較

 

表2.APX1発現型および欠失型品種間の交雑後代集団における多型の分離と他遺伝子との関連

その他

  • 研究課題名:ダイズ生育不良型冷害の生理機構の解明
  • 予算区分:21世紀2系
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:船附秀行、邑上豊隆、松葉修一、川口健太郎、佐藤裕
  • 発表論文等:船附ら(2001)育種学研究3(別3):246