めん羊の採食調節におけるコレシストキニンの作用部位
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要約
めん羊の採食調節機構においてコレシストキニンは中枢性および末梢性に採食を抑制する作用を有し、末梢の作用部位は小腸にある可能性が高い。
- キーワード:生理、めん羊、採食調節、コレシストキニン、作用部位、中枢、末梢
- 担当:北農研・畜産草地部・家畜生理繁殖研究室、上席研究官
- 連絡先:011-857-9269
- 区分:北海道農業・畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
プチドホルモンのコレシストキニン(CCK)は採食調節機構における有力な満腹信号の候補の一つと考えられているが、反すう動物では研究が少なく、採食調節におけるその生理的役割や作用機序については不明な点が多い。このホルモンは小腸と脳で分泌されるが、その作用部位が中枢、末梢いずれにあるのかも明確にされていない。そこで本研究はめん羊を実験動物として用い、CCKの採食に対する効果が生体内のどの部位に作用して発現するのかを明らかにする。
成果の内容・特徴
- めん羊の第三脳室にCCKを注入すると、投与量に比例して注入時間中の採食量が抑制される(図1)。また、めん羊の4カ所の末梢血管(頸動脈、頸静脈、門脈、前腸間膜動脈)にCCKを注入した場合にも、それぞれの血管注入の時間中に投与量に比例した採食量の抑制が観察される(図2)。
- 末梢血管に注入した場合の採食量抑制効果は、門脈<頸動脈<頸静脈<前腸間膜動脈の順に強くなる傾向が認められ、特に門脈注入時の抑制効果は他の3血管よりも有意に弱い(図3)。
- 脳に血流を送る頸動脈へのCCK注入が末梢投与の中で一番強い抑制効果を示さないということは、CCKの採食抑制に関わる作用部位が中枢と末梢にそれぞれ別々に存在することを示唆する。また、末梢における作用部位は血液の流れから見て前腸間膜動脈に一番近く、門脈に一番遠い臓器である小腸に存在する可能性が高い。
成果の活用面・留意点
- 反すう動物においてもCCKが中枢性および末梢性に採食調節に関わる生理的役割を持つことが明らかとなり、今後の採食調節研究の基礎的知見として活用できる。
- 末梢における作用部位に関しては、さらに詳細に特定するための研究が必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:反すう家畜の採食調節機構におけるコレシストキニンの役割の解明
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1997~2001年度
- 研究担当者:大谷文博、押尾秀一、田鎖直澄、上野孝志
- 発表論文等:大谷ら(1999)第95回日畜大会講要:85