めん羊の採食調節におけるコレシストキニン受容体の関与

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要約

めん羊の末梢におけるコレシストキニンの採食調節作用発現には特異的な受容体が関与し、その受容体のサブタイプはBタイプではない。

  • キーワード:生理、めん羊、採食調節、コレシストキニン、受容体、サブタイプ
  • 担当:北農研・畜産草地部・家畜生理繁殖研究室、上席研究官
  • 連絡先:011-857-9269
  • 区分:北海道農業・畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

コレシストキニン(CCK)は反すう動物でも採食を調節する満腹信号の一つとして中枢性および末梢性に作用していると推測されるが、反すう動物の採食調節におけるCCKの生理的役割を明確にするためには、その作用の発現機序を解明することが重要である。一般的にCCKのホルモン作用発現には特異的な受容体が関与し、その受容体には異なった体内分布をするAタイプとBタイプ二つのサブタイプが存在して、それぞれがCCKの異なった生理作用を仲介していると考えられている。そこで本研究はめん羊を対象に、CCKの末梢における採食抑制作用の発現に特異的受容体が関与するか否かを明らかにし、さらにその受容体のサブタイプを同定する。

成果の内容・特徴

  • CCKの頸静脈注入によって抑制されるめん羊の採食量は、前腸間膜動脈(CCKの作用部位の一つがあると推測される小腸に直接血流を送る血管)へCCK受容体遮断薬のプログルミド120mg/kg・minを同時注入すると、約3割程度ではあるが有意に回復する。ただし、これよりも高濃度のプログルミドはそれ自体が採食量を低下させるため、これ以上のCCK作用遮断効果はこの遮断薬では観察できない(図1)。
  • 同様の120mg/kg・minプログルミドを門脈(注入部位として血流的に小腸から一番離れた血管)に同時注入した場合には、CCKの頸静脈注入による採食量の低下を回復させる効果は認めらない(図2)。これらの結果は主に小腸で作用すると考えられるCCKの末梢性採食抑制作用の発現に、CCKに特異的な受容体が関与することを示唆している。
  • BタイプのCCK受容体は刺激するがAタイプの受容体は刺激しないことが知られている非硫酸化型CCK(desCCK)をかなりの高濃度で前腸間膜動脈に注入してもめん羊の採食は抑制されない(図3)。このことは末梢性の採食調節に関与するCCK受容体がBタイプではないことを示唆している。

成果の活用面・留意点

  • 反すう動物の末梢性採食調節機構に関する基礎的知見として今後の採食調節研究において活用できる。
  • 受容体サブタイプを明確に特定するためには、サブタイプに特異的な遮断薬等を使用したさらなる研究が必要である。

具体的データ

図1.頸静脈CCK及び前腸間膜動脈プログルミド同時注入の効果

 

図2.頸静脈CCK及び門脈プログルミド同時注入の効果 図3.desCCK前腸間膜動脈注入の効果

その他

  • 研究課題名:反すう家畜の採食調節機構におけるコレシストキニンの役割の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1997~2001年度
  • 研究担当者:大谷文博、押尾秀一、田鎖直澄、上野孝志
  • 発表論文等:大谷ら(2000)第97回畜大会講要:142