酪農経営におけるふん尿処理作業の潜在的委託需要の推定方法

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要約

酪農経営におけるふん尿処理作業の潜在的委託需要の有無を、ふん尿余剰量、適期内散布可否、労働時間過不足を推計し、この3要因から類型化して推定する手法を開発した。

  • キーワード:酪農経営、ふん尿処理作業、潜在的委託需要、コントラクタ
  • 担当:北農研・総合研究部・動向解析研究室
  • 連絡先:011-857-9308
  • 区分:北海道農業・総合研究
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

北海道の畑作酪農地帯では、コントラクタがふん尿処理作業の担い手として期待されている。そこで、今後のコントラクタ設立や運営に資するため、酪農経営が自家圃場等で処理・利用しきれない余剰ふん尿量、自家圃場などへのふん尿の適期内散布の可否、酪農経営における総労働時間の過不足を推計し、これらに基づきふん尿処理の実態を類型化し、ふん尿処理作業の潜在的委託需要の有無を推定する手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 酪農経営が自家圃場等で処理・利用しきれないふん尿余剰は、経産牛および育成牛の頭数から排泄されるふん尿量と利用作物別耕地面積及び作物別散布可能量から算出される処理可能量の差、すなわち「自家圃場等への受け入れ可能量との大小」として求める。(図1のI)
  • 酪農経営が適期内にふん尿を処理・利用できるかどうかを表す適期内散布可否は、排泄されるふん尿の散布時間および積載・運搬時間から算出される処理・利用に要する作業時間と、作物の生育や気象条件および酪農経営の労力条件から算出される散布可能時間の差、すなわち「散布時間との大小」として求める。(図1のII)
  • 酪農経営における労働時間過不足は、1人当たりの飼養管理労働時間、圃場作業労働時 間の合計と「酪農および肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」の経営指標に掲げられている目標労働時間(2,000時間/人)との差、すなわち「目標労働時間との大小」として求める。(図1のIII)
  • 酪農経営におけるふん尿処理作業の潜在的委託需要の有無は、以上で推計した「ふん尿 余剰」、「適期内散布可否」、「労働時間過不足」を指標とし、AからDの4つのカテゴリーに区分する。カテゴリーA以外の酪農経営にはふん尿処理作業の潜在的委託需要があり、Dが最も高いことを示している。(表1)
  • この推定方法を表2の前提条件に基づき十勝管内のX農協の酪農経営(全54戸)に適用した。その結果、4戸がカテゴリーA、7戸がB、14戸がC、29戸がDに区分され、80%の農家に潜在的委託需要があると推定された。この中で、実際に委託を行っているのはCとDに属する6戸であった。(表3)

成果の活用面・留意点

  • 土地利用型酪農経営を対象とするコントラクタの設立や運営にあたり、当該地域の潜在的委託需要の把握のための基礎資料等の作成に適用できる。
  • 本研究では、ふん尿の経営内部処理困難性を、ふん尿処理作業の潜在的委託需要とした。ここでは、自家圃場で処理・利用しきれないふん尿は、堆肥センターや畑作農家(麦稈 交換用)へ供給され、その運搬作業等はコントラクタへ委託されるものとした。
  • 本法は、表計算ソフトのシートを利用する。利用希望者には、例示シートを提供することが可能である。

具体的データ

図1.酪農経営におけるふん尿処理作業の潜在的需要の推定フロー 表1.カテゴリーの判別基準

 

表2.推定における前提条件 表3.推定結果

その他

  • 研究課題名:堆肥生産と流通に関する中間支援システムの確立
  • 予算区分:作物対応研究[転作作物]
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:藤田直聡、鵜川洋樹、細山隆夫、南部博
  • 発表論文等:藤田(2001)2001年度日本農業経済学会個別報告
                      藤田(2001)102回北海道農業経済学会