準同質遺伝子系統における高分子量グルテニンサブユニットの製パン性への効果
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要約
コムギの高分子量グルテニンサブユニットの異なる準同質遺伝子系統を育成した。Glu-A1サブユニット1と2*は製パン性に差はなく、Glu-B1サブユニットの製パン性への効果は17+18>7+9=7+8=6+8>20の順に大きく、Glu-D1サブユニットでは5+10>4+12=2+12=2.2+12である。
- キーワード:コムギ、高分子量グルテニン、準同質遺伝子系統、製パン性
- 担当:北海道農業研究センター・畑作研究部・麦育種研究室
- 連絡先:0155-62-9210
- 区分:作物・冬作物
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
高分子量グルテニン(HMWG)サブユニットの製パン性への寄与はGlu-D1遺伝子座がコードする5+10サブユニットが2+12サブユニットより大きいことがわかっている。個々のサブユニットの製パン性への寄与については十分な解明が進んでいない。そこで個々のサブユニットを単独で持つHMWGサブユニットの準同質遺伝子系統を育成し、各サブユニットの製パン性への効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- HMWGサブユニットの準同質遺伝子系統はサブユニットの供与親に「農林61号」、「ハルユタカ」、「タクネコムギ」、「チホクコムギ」を用い、「春のあけぼの」を反復親として、5回の戻し交雑を行った8系統である(図1)。
- 導入したHMWGサブユニットは「ハルユタカ」からはサブユニット1、17+18および2+12、「農林61号」からは7+8および2.2+12、「タクネコムギ」からは6+8および4+12、「チホクコムギ」からは20である(表1)。
- SDS-セディメンテーションテストの沈降量、小麦粉生地のミキシング時のピークタイムおよびブレイクダウン、破断力測定の破断力および破断変形量は、サブユニット間で有意な差がある(表2)。
- ノータイム法による製パン試験の結果、サブユニットGlu-b1 17+18のパン比容積は「春のあけぼの」よりも高く、Glu-A1の1、Glu-B1の6+8、7+8、20の比容積は「春のあけぼの」と同程度であったが、Glu-D1の4+12、2+12、2.2+12は低い値である(図2)。
成果の活用面・留意点
- 育成系統は小麦粉の加工適性に関する試験やHMWGサブユニットの解析の研究に利用できる。
- 製パン性のより詳細な評価には、各Glu-A1、Glu-B1、Glu-D1サブユニット間の相互作用やHMWG以外の蛋白組成の効果も検討する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:寒地向き高品質安定多収小麦品種の育成
- 予算区分:経常、交付金
- 研究期間:1994~2001年度
- 研究担当者:高田兼則、西尾善太、桑原達雄
- 発表論文等:Takata et al. (2000) Breed. Sci. 50:303-308.