放牧しながらできる暖地型牧草地造成法
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要約
放牧利用に伴い乾物生産量の低下した放牧地を対象に、放牧しながら暖地型牧草地を造成する方法を開発した。裸地率が70%以上の放牧地では不耕起造成法で、裸地率は低いが機械作業が可能な場合は耕起造成法で造成を行うと、ほぼ造成2年目で牧草化する。
- キーワード: 生態、暖地型牧草、放牧、耕起造成法、不耕起造成法
- 担当:近中四農研・総合研究部・総合研究第5チーム
- 連絡先:0854-82-0144
- 区分:近畿中国四国農業・畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
耕作放棄地を対象に放牧を行うと野草の乾物生産量は経年的に減少し、それに伴って牧養力も低下するので、牧養力を高めるためには牧草地の造成が必要となる。そこで、放牧しながら暖地型牧草地(センチピードグラス草地、カーペットグラス草地、バヒアグラス草地)を造成する方法(不耕起造成法と耕起造成法)を開発した。
成果の内容・特徴
- 不耕起造成法
裸地率70%以上の放牧地が対象となる。
1) 播種・放牧:5月に種子(4kg/10a)を耕起せずに播種し、直ちに放牧を行う(写真1)。年間放牧頭数は
240~360頭・日/ha。
2) 牧草が野草に被圧されないように、草地の草高を低く維持できる(表1)ので掃除刈りは必要ない。
3)造成2年目の7月の出現頻度は90%を越え、2年目には牧草地化する(表1)。
- 耕起造成法
裸地率は低いが機械作業が可能な放牧地が対象となる。また、造成した牧草地は野草地と組み合わせて放牧に利用する。
1) 播種・放牧:5月に耕起・播種(種子量2kg/10a)した後、トラクタの車輪で十分に鎮圧し(写真2)、直ちに放牧を行う。
年間放牧頭数は470~550頭・日/ha。
2) 牧草が野草に被圧されないように、草地の草高を低く維持できる(表2)ので掃除刈りは必要ない。
3)造成2年目の出現頻度はセンチピードグラス85%、カーペットグラス97%で、造成2年目には両草種とも牧草地化する
(表2)。
- 三草種いずれも放牧しながら草地造成が可能であるが、ランナーの伸長が旺盛なセンチピードグラスが有望草種である。
成果の活用面・留意点
- 対象地域は、冬温暖な中国地域の沿岸部の放牧地である。
- 播種後旱魃傾向の場合、発芽が遅れるため牧草が目に付くのは秋頃になる。牧草が野草に被圧されないように放牧を続ける事が大切である。
- エゾノギシギシ、ワラビ、アザミ等が発生したら除草剤散布や適期に掃除刈りを行い防除する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:放牧利用による遊休農林地の保全的管理・利用技術の開発
- 予算区分:遊休農林地活用
- 研究期間:1998~2002年度
- 研究担当者:小山信明、千田雅之、谷本保幸