一斉収穫機を用いたキャベツの収穫調製・箱詰め・運搬の同時作業体系

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

キャベツの新型一斉収穫機をベースとして、リモコントラクタとトレーラ伴走による機械収穫体系である。3人組作業による、収穫・再調製・箱詰め・運搬の同時工程で収穫作業時間が短縮され、作業者への負荷が小さく、より持続的な作業が可能である。

  • キーワード:キャベツ、大規模圃場、一斉収穫機、トレーラ伴走、リモコントラクタ
  • 担当:北農研・総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先:電話0155-62-9284、電子メールmhachiya@iam.brain.go.jp
  • 区分:北海道農業・総合研究、共通基盤・総合研究、野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

キャベツの省力生産技術体系の確立においては、作業時間が長く、栽培面積の拡大を規制している収穫作業の効率化が最も重要な課題である。そこで、畑作地帯における家族経営キャベツ生産を想定した省力的で軽労化を図る機械収穫体系を開発し、現地実証試験を通じてその適応性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 収穫機本体(改良機)は、機体後方で作業者1名が安全に全て操作できるよう、前処理部と走行速度を調節するスイッチとレバーを設けるとともにステップ台車を装備する(図1左)。特に前処理部の掻込ホイールの高さは電動モータとリンク機構を介して制御される。
  • 収穫機に伴走するトレーラを牽引するトラクタの操作はリモコンにより無人化される。トレーラにはキャベツ搬送コンベヤ、再調製装置および収穫物と空箱の搬送用ローラコンベヤを装備し、270m一往復(3.2a)分の収穫物を積載するスペースを保有する(図1右)。
  • 本体系の特徴は以下のとおりである。
    1)収穫機では、作業者は歩行を伴わない立ち作業でキャベツを収穫することができる。また、圃場・作物条件に応じ
      て前処理部の高さ調整によって、土の掻込みによるキャベツの汚れを回避できる。機械切断ロスは1.0%と低く、外
      葉の付着枚数も概ね設定どおりである。
    2)トレーラ上では、2人の作業者は立ち作業で腰を曲げることなくキャベツの切り直しや箱詰めをし、収穫物の箱を一
      定の高さから運び出すことができ、軽労化を図ることができる。
    3)収穫前に培土機を用いて溝を形成してこれをトラクタの走行路とすることにより、安定した直進性を確保し、収穫作
      業の安定性にも貢献する(図2)。
    4)3人組作業による本体系では作業速度は約10cm/sで圃場作業量は約6h/10a、投下労働量は18人・h/10aである。
      手取り収穫体系(32人・h/10a)と比較して40%以上の労働時間を短縮し、有効作業効率は80~85%である(表1)。作
      業者の姿勢は大きく改善され(図3)、作業強度と作業能率に基づく試算結果から1日(8時間労働)約11aの高能率収
      穫ができる。
    5)経営試算によれば、25ha規模の畑作+キャベツ作経営などでは補助事業での導入を前提とすると、初期投資額お
      よび修繕費をほぼ回収でき(図4)、併せて軽労化効果が高いことからその導入の合理性がある。

成果の活用面・留意点

  • 現状の家族経営規模においてキャベツ作の軽労化と一定の作付拡大を図る際に活用できる。
  • トラクタ-トレーラ車両系が走行するための一定幅の作業通路を確保する必要がある。

具体的データ

図1.改良型収穫機本体とこれを基軸としたトレーラ伴走式収穫体系

 

図2.走行溝を利用した収穫作業 図3.キャベツ収穫作業の姿勢改善

 

表1.トレーラ伴走式収穫体系の作業性

 

図4.トレーラ伴走式収穫体系への投資限界の試算結果

その他

  • 研究課題名:基幹畑作に直播キャベツを導入した新作付体系の確立
  • 予算区分:地域総合(大規模畑作)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:八谷 満、山縣真人、小島 誠、天野哲郎、坂本英美、奥野林太郎、石川枝津子
  • 発表論文等:1)八谷ら(2001)特願2001-368461.
                      2)八谷(2003)農業および園芸78(1):66-72.