直播栽培向け低アミロース米水稲新品種「はなえまき(旧系統名 北海288号)」

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要約

早生低アミロース系統「はなえまき」は、直播栽培において「ゆきまる」より一穂籾数が多く多収である。直播栽培での白米アミロース含量は移植栽培の「あやひめ」並に低く、良食味である。

  • キーワード:水稲、直播、低アミロース、早生、良食味
  • 担当:北農研・作物開発部・稲育種研究室
  • 連絡先:電話 011-857-9311、電子メールandow@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・作物、作物・稲
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

今後稲作の一層の規模拡大による生産コスト低減、複合経営化等による所得向上を図るには、省力で労働ピークの緩和が可能な直播栽培技術の導入が必要である。
これまでの北海道の直播向け奨励品種「きたいぶき」は食味が不十分であるため、近年は「ゆきまる」が直播栽培に用いられている。しかし「ゆきまる」も価格が低迷し、作付けが減少してきている。そのため、多収で良質の直播向け品種の育成・普及が強く求められている。

成果の内容・特徴

  • 交配組合せは、道北53号/水稲中間母本農11号//空育139号(後のゆきまる)である。道北53号に由来する「あやひめ」「はなぶさ」と同じ低アミロース遺伝子をもつと推定される。
  • 直播栽培での出穂期・成熟期は、育成地では「ゆきまる」より出穂期で2~3日遅く、成熟期で3日遅い早生の晩である(表1)。
  • 直播栽培では「ゆきまる」より一穂籾数が多く多収である。(表1、表2)
  • 食味は「ゆきまる」に優る。(表1)。
  • 直播栽培での白米アミロース含量は約10%で、移植栽培の「あやひめ」並である(表1)。直播栽培での白米蛋白質含量は「ゆきまる」より低く、移植の「あやひめ」並である(表1)。
  • 苗立ち率は「ゆきまる」よりやや低い。耐倒伏性は「ゆきまる」並の"やや強"である(表1)。
  • m2当たり200本以上の苗立数を確保すると収量は安定し、「ゆきまる」より多収となる(図1)。
  • 玄米の外観品質は「ゆきまる」並で、検査等級は「ゆきまる」よりやや劣る(表1)。
  • 穂ばらみ期の耐冷性は「ゆきまる」並の"強~やや強"である(表1)。いもち病真性抵抗性遺伝子型はPia、Pii、Pikであり、葉いもち抵抗性は"強"、穂いもち抵抗性は"中"である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 上川中部及び留萌南部以南の直播栽培に用いる。
  • 生産米の用途は「あやひめ」「はなぶさ」同様、主としてブレンド用である。
  • 「ゆきまる」より苗立率がやや劣るため、「ゆきまる」と同等の苗立ち数を確保するためには播種量を増やす必要がある。

具体的データ

図1.苗立数と収量との関係

 

表1 北海288号の特性概要

 

表2 配付先における「北海288号」の収量、一穂粒数および穂数

その他

  • 研究課題名:高度耐冷性と低温苗立ち性を備えた寒地向き直播適応性品種の育成
  • 予算区分:21世紀プロ5系
  • 研究期間:1992~2002年度
  • 研究担当者:安東郁男、清水博之、黒木慎、荒木均(作物研)、三浦清之(中央農研)、
                      永野邦明(宮城・古川農試)、西村実(生物研)、今野一男(退職)