単品利用に適する低アミロース米水稲新品種「おぼろづき(旧系統名 北海292号)」
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要約
おぼろづきは寒地で「中生の早」熟期の良食味・低アミロース米系統である。既存の低アミロース米品種と比較してアミロース含量がやや高くかつ年次変動が小さい。炊飯米の特性は、粘り、柔らかさが既存の低アミロース米品種と一般品種の中間的な特徴を有し、米粒の白濁やもち臭が少ない。
- キーワード:低アミロース、良食味、水稲
- 担当:北農研・作物開発部・稲育種研究室
- 連絡先:電話 011-857-9311、電子メールandow@affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・作物、作物・稲
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
「ミルキークイーン」をはじめとする低アミロース米品種は、最近全国的に認知度が高まり、ブレンドあるいは単品での飯米、加工米飯用として一定の市場が開拓された。低アミロース米品種は、白飯の粘りが非常に強く柔らかい特徴を生かした活用がなされているが、高温登熟による米粒の白濁、過度な粘り、もち臭は実需からマイナスの評価をされるケースがある。そこで、品質変動が少なく適度な粘りでもち臭の少ない低アミロース米品種の開発により、登熟気温が低い寒地の条件を生かして嗜好性に優れた単品ブランド米生産を行うことをねらいとした。
成果の内容・特徴
- 水稲「おぼろづき」は、空育150号(後のあきほ)/95晩37(後の北海287号)から育成された良質の低アミロース系統である。なお北海287号はきらら397の低アミロース培養変異体に由来する系統である。
- 出穂期は、育成地では「あやひめ」、「ほしのゆめ」並の中生の早である(表1)。
- 稈長は「あやひめ」よりやや短く、穂数は「あやひめ」より多く、一穂籾数のやや少ない穂数型である(表1)。
- 穂ばらみ期耐冷性は「あやひめ」よりやや強い"強"である。いもち病真性抵抗性遺伝子型はPii、Pikであり、葉いもち抵抗性は"やや弱"、穂いもち抵抗性は"中"である(表1)。
- 収量性は、「あやひめ」、「ほしのゆめ」よりやや低い(表1)。
- 玄米の外観品質は、「あやひめ」並の中上であり、検査等級は優り良質である(表1)。
- 千粒重は「あやひめ」よりやや重い(表1)が、粒厚はやや薄く、ほしのゆめよりやや厚い程度である。
- 単品の炊飯米の食味は、「ほしのゆめ」に対して白さが同等でつやが優り、総合値も優る。粘りや柔らかさは「ほしのゆめ」と「あやひめ」の中間程度である(表2)。
- アミロース含量は「あやひめ」よりも高く、年次による含量の変動が比較的少ない(図1)。
- 米粒は白濁しにくく、もち臭が「あやひめ」、「ミルキークイーン」より少ない(表1)。
成果の活用面・留意点
- 上川中部及び留萌中南部以南の移植栽培に用いる。
- 用途は主として単品の飯米用である。
- 「ゆきまる」より苗立率がやや劣るため、「ゆきまる」と同等の苗立ち数を確保するためには播種量を増やす必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:水稲の良質、多収、耐冷性品種の育成
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1995~2002年度
- 研究担当者:安東郁男、清水博之、黒木 慎、荒木 均(作物研)、三浦清之(中央農研)、
永野邦明(宮城・古川)、今野一男