紫皮紫肉ばれいしょ新品種「キタムラサキ(旧系統名 北海88号)」

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要約

ばれいしょ「キタムラサキ」は、アントシアニン色素を含有し、いもの外皮と内部の肉色が紫色である。紫皮紫肉の既存品種「インカパープル」より一般栽培特性が優れ、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有する。

  • キーワード:ばれいしょ、紫肉、アントシアニン、ジャガイモシストセンチュウ
  • 担当:北農研・畑作研究部・ばれいしょ育種研究室
  • 連絡先:電話0155-62-9272、電子メールaohara@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・作物、作物・夏畑作物
  • 分類: 技術・普及

背景・ねらい

ばれいしょの原産地南米アンデス地域には、アントシアニン色素を含む赤~紫肉のばれいしょが存在する。これを改良したカラフルポテトの開発は、消費者のばれいしょに対する既存イメージを覆し、市場の活性化と新規需要の開拓を狙ったものである。紫肉のカラフルポテトとしては、「インカパープル」を育成したが、肉色のばらつきが大きい、いもの肥大が遅いために収量の安定性が低い、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性がないなどの欠点があった。このような背景からより肉色が安定し、栽培しやすい品種が求められている。

成果の内容・特徴

  • 「キタムラサキ」は、紫皮紫肉の「島系571号」を母、白皮白肉の「島系561号」を父とするジャガイモシストセンチュウ抵抗性系統間の交配集団より選抜された系統で、アントシアニンを含有し紫皮紫肉を有する。
  • 既存の紫肉品種「インカパープル」に比較し、完熟いものアントシアニン色素含量が高い(表1)。また、いもの大きさや熟度の違いによる色素含量のばらつきが少ないため(図1)、肉色の安定性が高い。なお、アントシアニンの主色素は「インカパープル」と同じペタニンである(表1)。
  • 熟性は中晩生で、「インカパープル」に比べて茎長が短く、いもの1個重が大きく、収量が多く、いもの肥大が早い(表1、図2)。これらのことから、「インカパープル」より栽培しやすい。
  • 用途は調理用で、でん粉価は「男爵薯」より高く「インカパープル」より低い(表1)。目が浅いため皮は剥きやすく、内部異常はほとんどない(表2)。水煮での黒変や煮くずれは少なく、食味は中である。油加工適性はやや不適~不適である(表3)。
  • ジャガイモシストセンチュウに対し抵抗性を持ち、汚染地での栽培では同線虫の密度を低減し、未発生地では汚染の拡大を未然に防ぐ効果がある(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 紫肉を生かした調理・加工や紫肉をアピールした産直販売が可能である。
  • 紫皮のため、土塊といも、また、緑化や腐敗等の見分けが難しいのでよく注意する。
  • 休眠期間が比較的長く、頂芽優勢が強いため、頂芽の損傷により萌芽の不揃いを生じやすい。浴光育芽時には芽を伸ばしすぎないようにし、種いもの切断に注意する。
  • 生育後半に葉が巻く症状がでることがあるが、生理的なものである。

具体的データ

表1 生育および収量等特性

 

表2 いもの特性およびジャガイモシストセンチュウ抵抗性

 

表3 調理特性

 

図1 生育期間におけるアントシアニン含量のばらつき

 

図2 生育期間における上いも平均一個重の推移

その他

  • 研究課題名:ばれいしょ高品質優良品種の育成
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1991~2002年度
  • 研究担当者:森元幸、小林晃、高田明子、津田昌吾、高田憲和、梅村芳樹、中尾敬、 吉田勉、木村鉄也、
                      米田勉、百田洋二、串田篤彦