チモシーを基幹とする集約放牧草地における放牧草の望ましい粗蛋白含量

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要約

チモシーを基幹とする集約放牧草地では、放牧草の粗蛋白含量をいつの季節でも25%未満に維持するため、春と夏では粗蛋白含量20%を目安とし、1回当たりの窒素施肥量を3kg/10a以内とした上で施肥後2週間目以降に放牧するよう留意する。

  • キーワード:チモシー、集約放牧、粗蛋白(CP)、血液中尿素態窒素(BUN) 、硝酸態窒素
  • 担当:北農研・畜産草地部・草地生産研究室
  • 連絡先:電話011-857-9235、電子メールsyun@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

放牧草の粗蛋白(CP)含量は高い値になりやすく、放牧家畜の栄養状態は蛋白過剰になる傾向の強いことが知られている。これに対し、窒素の施肥管理は放牧草のCP含量を大きく変化させ得ることから、放牧草のCP含量を適切な水準に維持するための施肥管理技術の開発が期待される。そこで、チモシーを基幹とする集約放牧草地を対象として、放牧草の望ましいCP含量の水準を、放牧草の粗飼料品質の面から検討する。

成果の内容・特徴

  • 放牧草のCP含量が25%を上回ると、濃厚飼料無給与かつ全日放牧条件における放牧牛の血液中尿素態窒素(BUN)濃度は繁殖性等に望ましくない20mg/dLに至る。一方、放牧草のCP含量が15%を下回ると、放牧牛のBUN濃度が20mg/dLに至る危険性はほとんどなくなる(図1)。
  • CP含量25%以上のチモシーでは、硝酸態窒素含量も危険値とされる0.2%を大幅に越えやすくなる。一方、CP含量15%未満では、硝酸態窒素含量が0.2%に至る危険性はほとんどない。この中間の水準では、硝酸態窒素含量が一時的に0.2%に至る場合があるが、大幅に越える危険性は少ない(図2)。
  • チモシーのCP含量は、季節の進行に伴って上昇する傾向があり、5-8月に20%を越えると9-10月には25%以上となる(図3)。
  • チモシー単播草地において放牧時の輪換間隔を想定した刈取り間隔を7日以上(図4△、□)とするならば、1回当たりの窒素施肥量を3kg/10a以内とし、施肥後2週間程度以降に利用することで硝酸態窒素含量上昇の危険性は小さい(図4)。
  • 以上の結果、チモシーを基幹とする集約放牧草地では、放牧草のCP含量が放牧期間を通じて25%未満となるように管理することが安全である。そのためには、春と夏の放牧草CP含量を20%程度とし、1回当たりの窒素施肥量を3kg/10a以内とした上で施肥後2週間目以降に放牧するよう留意する。

成果の活用面・留意点

  • チモシーを基幹とする集約放牧草地における放牧草の栄養診断に用いる。
  • チモシーを基幹とする草地における集約放牧とは、放牧時の利用草丈約30cm、喫食草高10cm程度の短期輪換放牧を指す。

具体的データ

図1.チモシー単播草地における放牧草のCP含量と 放牧牛のBUN濃度の関係 図2.刈り取り間隔と施肥量の異なるチモシー単播 草地におけるCP含量と硝酸態窒素含量の関係

 

図3.施肥量の異なるチモシー単播草地に おけるCP含量の季節変化 図4.1回当たりの窒素施肥量と施肥後経過日数 が刈り取り間隔の異なるチモシー単播草地 の硝酸態窒素含量に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:北海道における持続型放牧草地の植生管理技術の開発
  • 予算区分:経常・畜産対応研究(自給飼料基盤)
  • 研究期間:1997~2000年度
  • 研究担当者:三枝俊哉、手島茂樹、小川恭男、高橋俊
  • 発表論文等:1)三枝ら (2002) 日草誌 48(4):346-351.