イネ穂ばらみ期耐冷性に関与する sucrose synthase 2 遺伝子
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要約
イネ穂ばらみ期の低温処理によって、稔実率が原品種に比べて、著しく低下する突然変異系統を選抜した。この穂ばらみ期耐冷性に関する突然変異の原因遺伝子は、スクロース合成酵素2(sucrose synthase 2)遺伝子である。
- キーワード:イネ、穂ばらみ期耐冷性、突然変異、スクロース合成酵素遺伝子
- 担当:北農研・地域基盤研究部・冷害生理研究室
- 連絡先:電話011-857-9312、電子メールosa@affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・基盤研究
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
北海道をはじめ、わが国のイネ育種において、穂ばらみ期耐冷性の向上は重要な育種目標であるが、そのためには耐冷性に関わる遺伝的機構を明らかにすることが望まれる。そこで本研究では、イネの内在性レトロトランスポゾンであるTos17 の挿入変異による突然変異系統(ミュータントパネル)から、穂ばらみ期耐冷性に関する変異系統を選抜し、原因遺伝子を解析することによって、穂ばらみ期耐冷性に関わる遺伝子の同定を試みる。
成果の内容・特徴
- 穂ばらみ期耐冷性が弱いイネミュータントパネルH0018系統では、スクロース合成酵素2(sucrose synthase 2)遺伝子(以下、RSus2 と略す)の第6エキソンに、Tos17 が挿入されている(図1)。
- 3種のプライマー(5F, 7R, Tail5R)を用いるPCR法によって、H0018系統での個体ごとの RSus2 遺伝子型を判別出来る(図2)。
- ファイトトロンでの穂ばらみ期耐冷性試験(12℃・5日間)では、RSus2 遺伝子におけるTos17 挿入ホモ個体で特異的に耐冷性が低下する(表1)。
- 穂ばらみ期耐冷性弱の「豊光」と耐冷性強の準同質遺伝子系統「510-2」の穂ばらみ期の頴花におけるRSus2 遺伝子の発現量は、「510-2」では12℃処理によって発現量が増大し、「豊光」では逆に発現が抑制される(図3)。
- 上記結果は、本遺伝子が穂ばらみ期耐冷性に関わることを示している。
成果の活用面・留意点
スクロース等の糖類と耐冷性の関係についての生理・遺伝研究に利用できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:低温誘導性遺伝子群の単離と機能解析
a.イネの低温耐性に関わる遺伝子の単離および機能解析
- 予算区分:ミュータントパネル
- 研究期間:2000~2002年度
- 研究担当者:松葉修一、船附秀行、川口健太郎、佐藤裕