ケンタッキーブルーグラス定置放牧草地の簡易な現存量の推定

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要約

日乾物生産量を現存量から推定する式を導き、これを組み込んだ簡易なモデルを適用することで、ケンタッキーブルーグラス定置放牧草地の現存量の変化を予測できる。

  • キーワード:現存量推定、放牧草地、定置放牧、ケンタッキーブルーグラス
    専門分野:栽培、対象:牧草類
  • 担当:北農研・畜産草地部・草地生産研究室
  • 連絡先:電話011-857-9235、電子メールtyagi@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

近年増加している耕作放棄地の発生を防止するため、農地の省力・低コスト管理方法が必要である。ケンタッキーブルーグラス(KB)は多くの寒地型牧草に比べ季節生産性が平準であり定置放牧などの省力的放牧方法に適する。定置放牧では放牧頭数を固定するため、現存量のコントロール、特にスプリングフラッシュの抑制が非常に重要である。そこでKB定置放牧草地の現存量を推定するモデルを構築し、適切な草地管理方法の検討に役立てる。

成果の内容・特徴

  • 一定時間経過後の現存量を単位面積当たりの日乾物生産量から日被食量を差し引いた値を1日単位で累積して求める。萌芽日を時間tの開始(t=0)とし、この時点の現存量V(0) を0(g/m2)とする。
                                                                              V(t+1) =V(t)+( P - I)
                                                                               P =aV(t)2+bV(t)+c
                                                                                       I = d W
    〔V: 現存量(地上高3cm以上)、P: 日乾物生産量、I: 日被食量、W: 体重(V,P,I,Wの単位はg/m2)、a,b,c,d: 係数〕
  • 現存量と日乾物生産量の実測値から、現存量を独立変数、日乾物生産量を従属変数とする2次回帰式の係数a,b,cを最小二乗法により求める(図1)。
  • 日乾物生産量は施肥水準や放牧草の生育ステージの影響を受けるため、施肥量別、時期別に個々に係数a,b,cを決定する(表1)。
  • 本モデルによる推定値と実測値を比較すると、年度や施肥水準が異なる場合でもおおむね一致することから、KB定置放牧草地の現存量推定が可能である(図2)。
  • 本モデルを活用する一例として、入牧時期の違いが以後の現存量の推移に及ぼす効果を予測できる。標準施肥の場合、慣行の入牧時期では春期に現存量の増加が著しく大量の余剰草が発生するのに対し、入牧を慣行から15日早めることでスプリングフラッシュが軽減し、余剰草が減少する(図3)。
  • 以上のように、日乾物生産量を現存量から推定する式から作成したモデルによりKB定置放牧草地の現存量推定が可能であり、このモデルを用いてシミュレーションを行うことで適切な草地管理方法について検討できる。

成果の活用面・留意点

  • KBを基幹草種とする放牧草地の草地管理の参考となる。
  • モデルのパラメータは北海道中央地帯、褐色火山性土のKB・シロクローバ混播草地においてホルスタイン去勢育成牛を定置放牧した実験結果に基づく。

具体的データ

図1 現存量と日乾物生産量の関係

表1 日乾物生産量推定式の係数値と寄与率

図2 モデルによる推定値と実測値の比較

図3 モデルによる現存量推定の例

 

その他

  • 研究課題名:寒地におけるケンタッキーブルーグラスを基幹とする持続型放牧草地の利用管理技術の開発
  • 予算区分:21世紀6系
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:八木隆徳、高橋俊