北海道の市町村別米生産費と収益の推計

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要約

農水省米生産費調査の結果を基に、土地改良水利費、地代及び製品歩留まりの相違を考慮した北海道の市町村別米生産費と収益を推計し、60kg当たり生産費が12,000円未満となる水稲累積面積は13市町村、32,000ha程度であり、米価が60kg当たり12,000円の場合に家計費充足に必要な水稲面積は南空知では25ha以上であること等を明らかにした。

  • キーワード:市町村別米生産費、収益、米価水準、家計費
  • 担当:北農研・総合研究部・経営管理研究室
  • 連絡先:電話011-857-9310、電子メールtsuneo@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・総合研究
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

北海道の水田作経営は米価低落により大きな影響を受けているが、地域によりその影響は異なり、水稲作は高単収・良食味米地域へと立地移動・集中化が進むなど、水田作経営のあり方の地域差が拡大すると推察される。そこで、今後の水田作経営のあり方の検討に資するため、市町村別の米生産費(全算入生産費)と収益(家族労働報酬)の推計を行い、さらにそれらにより家計費を充足するために必要な水稲面積を試算した。

成果の内容・特徴

  • 農水省米生産費調査の北海道平均結果を基に、土地改良水利費、地代について市町村毎のデータを利用して修正し、市町村別の10a当たり米生産費を推計した(表1)。
  • 同じく農水省統計情報事務所調査により品種別・支庁別の製品歩留まりを推計し、これにより市町村別水稲単収について製品単収に換算する修正を行った。これを基に、市町村別の60kg当たり生産費を推計し、生産費の水準に応じた累積曲線を作成した(図1、表2)。その結果、水稲作付規模15ha以上の推計で、最も低額の市町村でも11,000円/60kgを下回ることはなく、生産費12,000円/60kg以下の水稲累積面積は13市町村32,000ha程度で、現在の水稲作付面積約12万haの1/4にとどまることが示される。
  • 上記生産費及び製品換算単収を基に、水稲作付規模15ha以上で米価を12,000円/60kgとした場合の米の10a当たり家族労働報酬の推計を行った(図2)。その結果によれば、上川中部地域では3万円前後であるのに対し、南空知地域では1~2万円の間であり、両地域間で家族労働報酬の額に1.5~2倍近い差が生じている。
  • 10a当たり家族労働報酬と市町村別推計家計費の比較から家計費充足に必要な水稲面積を試算した(表3)。米価が12,000円/60kgの場合には、上川中部地域では全市町村が水稲面積20ha未満であるのに対し、南空知地域では25ha以上、多くは30ha以上となる。米価が11,000円/60kgへ低下した場合には全地域で必要面積が増加するが、上川中部地域で全市町村が水稲面積25ha未満であるのに対し、南空知ではいずれも40ha以上必要とされる結果となる。

成果の活用面・留意点

  • 中長期的な観点からの水田土地利用を検討する上で活用できる。
  • 推計に当たって、データの制約等から地域による農機具装備の相違や農薬・肥料等投入資材の相違は考慮していないことに留意が必要である。

具体的データ

表1.米の10a当たり全算入生産費水準別市町村数

 

図1.60kg当たり生産費別水稲累積面積

 

表2.60kg当たり生産費水準別市町村面積

 

図2.製品換算単収と10a当たり家族労働報酬表3.10a家族労働報酬に基づく家計費充足必要面積別市町村数

その他

  • 研究課題名:寒地大規模水田利用方式の成立条件と作業受託組織の運営管理方策の解明
  • 予算区分:21世紀プロ(4系)
  • 研究期間:2002~2005年度
  • 研究担当者:仁平恒夫、坂本英美、相原克磨