ジャガイモシストセンチュウ対策のための抵抗性品種の利用指針

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要約

抵抗性馬鈴しょ品種を1作することにより、土壌中のジャガイモシストセンチュウ密度は平均80~90%減少する。しかし、植え付け時の線 虫密度が10卵/g乾土以上で減収する品種がある。畑の線虫密度に応じて抵抗性品種を選択すれば、減収を来さずに効率的な線虫防除を図ることができる。

 

  • キーワード:ジャガイモシストセンチュウ、密度低減、抵抗性品種、減収、利用指針
  • 担当:北海道農研・生産環境部・線虫研究室
  • 連絡先:電話011-857-9247、電子メールkushida@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

ジャガイモシストセンチュウ抵抗性馬鈴しょ品種には、線虫密度を低減化させる作用があり、その程度は約70%であるとされてきた。また、 線虫抵抗性品種は、線虫密度が高い場合には減収を来すことが知られている。近年、線虫抵抗性を持った品種が増え、普及が進みつつある。そこで、これら抵抗 性品種について、線虫防除への積極活用を促進するため、品種毎の線虫密度低減効果を詳細に調査し、期待できる線虫密度低減程度を把握するとともに、線虫畑 での収量特性を把握し、減収を来さない線虫密度レベルを推定し、利用指針を作成する。

成果の内容・特徴

  • 線虫抵抗性品種を1作すると、土壌中のジャガイモシストセンチュウ密度は平均80~90%減少する(図1)。
  • 各品種の密度低減効果は、利用する地域や年次が異なっても同程度が期待できる。また、線虫密度の高低に関わらず、同程度の効果が期待できる(図2-A)。
  • 線虫密度が高密度以上の場合は、低減効果が劣る品種がある。現在の主要奨励品種では、「スタークイーン」のみである(図2-B)。(0<低密度<10≦中密度<100≦高密度<300卵/g乾土≦甚密度)
  • 線虫畑における各抵抗性品種の収量性は品種によって異なるが、その収量パターンにより大きく3つに分けられる。それぞれの収量の特徴及び該当品種は、以下の通りである。
    1)線虫密度の高低によらず、減収しない(図3-A 「花標津」「ベニアカリ」)。
    2)線虫密度が中または高密度(表1)で減収し、密度の増加と共に減収程度も大きくなる (図3-B 「十勝こがね」「スタークイーン」)。
    3)線虫密度が中または高密度で、総収量に占める3Lサイズの収量の割合が著しく増加する (図3-C 「キタアカリ」「トウヤ」「さやか」「アトランチック」「アーリースターチ」)。
  • 株あたりの形成いも数は、線虫密度の増加と共に減少する。また、でんぷん価は、線虫畑においてもほとんど変わらない。
  • 植え付け時線虫密度と収量との関係から、減収を20%以下に抑えられる線虫密度レベルは、表1のように整理でき、利用指針とする。この利用指針に基づけば、減収を来すことなく抵抗性品種を栽培でき、効果的な線虫密度低減が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 抵抗性品種を用いてジャガイモシストセンチュウの密度低減を図る際の指針とする。
  • 植え付け時線虫密度が甚密度の場合は、生育の阻害や遅延の程度が大きいので、減収の有無に関わらず、馬鈴しょの栽培は避けることが望ましい。
  • 植え付け時線虫密度が高密度以上の場合は、馬鈴しょの生育は遅延する傾向があるため、疫病の発生に留意する必要がある。

 平成15年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分

課題名:ジャガイモシストセンチュウ対策のための抵抗性品種の利用指針(普及推進)

具体的データ

図1 抵抗性品種のジャガイモシストセンチュウ密度低減効果

 

 

図3 線虫圃場における抵抗性品種の収量パターン(A:花標津、B:十勝こがね、C:アーリースター)

 

表1  各抵抗性品種の線虫防除利用指針

 

その他

  • 研究課題名:抵抗性品種を核とした線虫防除技術の確立、抵抗性品種による線虫密度低減の実証
  • 課題ID:04-06-02-02-08-01、04-06-02-02-12-03
  • 予算区分:IPM
  • 研究期間:1999~2003年度
  • 研究担当者:串田篤彦、植原健人、百田洋二