泌乳中・後期の乳量改良を最大の確率で実現する選抜指数式

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要約

本選抜指数式は、意図された泌乳中・後期の乳量改良量を最大の確率で実現するために必要な各ステージ乳量育種価に対する重みづけ係数を求めることができる。

  • キーワード:乳用牛、選抜指数法、泌乳曲線、泌乳ステージ、家畜育種
  • 担当:北海道農研・畜産草地部・家畜育種研究室
  • 連絡先:電話011-857-9258、電子メールtkenji@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

泌乳前期の乳量増加は周産期病等の疾病多発、繁殖性低下を導きやすい。従来の305日乳量のみの改良に比べ305日乳量を高めながらかつ 泌乳曲線も改良するためには、強い選抜が必要となる。泌乳中・後期(例:61-280日)に一定量(例:100 kg)を上げるとしても、全体の乳量増加が100kgと同じでも、その上げ方は、その泌乳中・後期のいつどれだけ上げるかで無数にある。そこで、その無数 にある上げ方の中から、泌乳中・後期の乳量増加を最大の確率で実現するものを選ぶ必要がある。また、我が国の遺伝パラメータを用いて泌乳中・後期の乳量改 良を達成する選抜指数式が開発される必要がある。

成果の内容・特徴

  • 泌乳曲線のp次までのLegendre多項式回帰係数を変量効果として扱う検査日乳量モデルにおいて、それらの回帰係数の遺伝分散、回帰係数間の共分散をもとに泌乳ステージ毎の目標乳量を最大の確率で実現する選抜指数式が式1で作成される。なお、本指数式は、従来の表型値をもとにした指数式でなく、より正確な選抜をおこなうため前、中、後期の乳量育種価をもとにしている。
  • 1996年から2000年に初産分娩した全国検定牛のうち同じ検定日に同期牛が10頭以上おり、かつ305日乳量記録をもつ 30025頭の検査日乳量179271記録をもとにしてLegendre多項式回帰係数の遺伝分散、回帰係数間の共分散をgibbs-sampling法 により推定した。分娩後日数にともなう乳量の遺伝率は、泌乳前期に比べ中・後期に高く、中・後期の乳量改良に十分な大きさの遺伝率をもつ(表1)。
  • 開発された手法の例として、乳期を5-60-280-305日の3期に分け、泌乳前期(5-60日)の改良量を0にし、泌乳 中・後期(61-280日)に100kgの増加、泌乳末期(281-305日)は改良量を0にした選抜指数式(I*)を示す。をLegendre多項式の 0,1,2,3,4次項として
    I*は、Legendre多項式をもとにしているが、同じ改良を実現する各ステージの育種価を変数にした選抜指数式(I)は、iステージの育種価をGi(i=1は前期、2は中・後期、3は末期)とし、
    ステージ改良乳量を達成するための標準選抜差は0.633と大幅に小さくなり、より高い確率で中・後期の乳量改良を実現できることを示している。

成果の活用面・留意点

  • 例で示した選抜指数式は、ステージ別改良乳量を泌乳前期0kg、泌乳中・後期100kg、泌乳末期0kgとしたが、ステージ別改良乳量は、牛群毎の改良目標に応じて設定できる。
  • 同じ改良量をより小さな選抜差でできることより、今まで選抜をかけにくかった雌牛側からの改良も期待できる。

具体的データ

式1 泌乳ステージ毎の目標乳量を実現する選抜指数式

 

表1.分娩後日数にともなう乳量の遺伝率

 

その他

  • 研究課題名:泌乳曲線遺伝パラメータの推定とそれを用いた選抜法に関する研究
  • 課題ID:04-05-01-*-01-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2004年度
  • 研究担当者: 富樫研治、C.Y.Lin(カナダゲルフ大学)、西浦明子、武田尚人
  • 発表論文等: Togashi et al. (2003) J. Dairy Sci. 86:1487-1493.