北海道内の冬季における深層型発酵乾燥ハウスの処理能力
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要約
深層型発酵乾燥ハウスでは、道内の冬季においても材料温度が60℃以上に達し、乾物分解率が26%程度の堆肥化が行われている。しかし、
水分蒸発量あたりの乾物分解発熱量は1,350kcal/kgであり、処理過程での大きな水分低下は望めない。また処理量も温暖期の1/2~1/4であ
る。
- キーワード:堆肥化施設、発酵乾燥ハウス、乾物分解率、水分
- 担当:農研機構・北海道農研・総合研究部・農地農業施設研究室
- 連絡先:電話:011-857-9233、電子メール:mukai@affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・総合農業
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
温室のような建屋に自動撹拌装置を備えた発酵乾燥ハウスは、良質堆肥生産が期待できる堆肥化施設であるが、道内では冬季の良好な稼働が疑
問視されることや、ランニングコストが嵩むとの判断から、未だ導入事例は少ない。しかし近年道内においても、良質堆肥の生産や堆肥の敷料への再利用の要望
が高まっており、道内での発酵乾燥ハウスの利用条件や処理能力を明確にする必要がある。そこで、すでに道内に導入されている材料堆積高1.2~1.8mの
深層型発酵乾燥ハウスを対象に、冬季の稼働実態を調査した。
成果の内容・特徴
- 深層型発酵乾燥ハウスでは、材料の水分65~70%程度、容積重0.5~0.6t/m3に調整して投入すると、冬季にも材料温度が60℃以上、乾物分解率が平均26%に達する堆肥化が可能である(表1)。
- 処理過程では、約0.3kgの乾物分解にともない、水分1kgが蒸発する。乾物分解発熱量を4,500kcal/kgとする
と、水分蒸発量あたりの熱量は1,350kcal/kgである。このため処理過程での水分低下は小さく、材料水分が67%の場合、処理後の堆肥水分は
60%程度である。材料水分と処理後の堆肥水分との関係は、図1のように試算できる。
- 冬季に頻繁な攪拌を行うと材料温度が上がらなくなることから、攪拌機の稼働は1日あたり1~3回(温暖期は4~6回)で利用する。攪拌機は材料の移動・搬出の役割を兼ねるため、冬季の処理量は温暖期の1/2~1/4である。
- 冬期間の消費電力量は、堆積幅5m・高さ120cm・長さ70~90mの規模で、攪拌機と通気ブロア、換気扇の稼働をあわせ、60~120kWh/日である。
成果の活用面・留意点
- 深層型発酵乾燥ハウスの冬季処理量を概算するために利用できる。
- 処理量の季節変動や乾燥不足への対応のため、調査農家の多くは、前段に貯留施設、後段に乾燥舎としての通気型堆肥舎が併設されている。
- 温暖期には、攪拌機の稼働回数の増加などから、消費電力量が冬期間より増加する。調査施設での年平均電力消費量は、冬期間の4割増である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:発酵乾燥ハウスの寒地導入条件の解明
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:向弘之