北海道におけるキャベツの直播栽培及び機械収穫の経営評価

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要約

北海道の20~30ha規模の畑作経営では、キャベツの移植栽培にトレーラ伴走方式の機械収穫を導入することによりキャベツ作の拡大をは かることができる。直播栽培と機械収穫を組み合わせた直播・機械収穫一貫体系は、その省力性から35ha以上の大規模層ではキャベツ作拡大に寄与すると推 計される。

  • キーワード:畑作経営、キャベツ、トレーラ伴走方式、機械収穫、直播栽培
  • 担当:北海道農研・総合研究部・農村システム研究室
  • 連絡先:電話011-857-9309、電子メールamanot@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・総合研究、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

北海道の畑作経営では、1990年代に入り畑作物の価格低下による農業所得の低下に対応して野菜の導入が進展した。しかし、野菜類は面積 当たりの投下労働時間が多いうえ作業員の労働負担が大きく、畑作経営に輪作作物として定着するためには、その省力化・軽労化が求められる。本研究ではキャ ベツの直播栽培やトレーラ伴走方式による機械収穫の現地実証試験結果に基づき、それらの新技術が畑作経営に及ぼす効果を線型計画法を用いて分析し、北海道 におけるキャベツ機械化の方向を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • トレーラ伴走による機械収穫によれば、3人組作業の場合12cm/sの作業速度で長辺270mの畦の往復作業を製品の積み降ろしなしで連続的に行え、枕地の手取り収穫を含めても19.7人・時/10aで作業が可能である。
  • この機械収穫方式を導入した場合の効果を線型計画法を用いて経営耕地面積規模別に試算すると、3.35~4.84haと手取りの場合より1.2~1.6ha程度キャベツ作が拡大できる。トレーラ伴走方式の機械収穫への投資限界を求めると20~30ha規模では330~380万円と、補助事業で導入する場合の機械投資額及び耐用期間内の修理費を上回り、作業姿勢の改善による軽労化効果も高いことから導入の合理性がある(図1、2)。
  • 直播栽培とトレーラ伴走方式の機械収穫を組み合わせた直播・機械収穫一貫体系では、体系全体での投下労働時間が24人・時/10aと慣行の50%まで低下することができる一方、気象条件や作型によっては移植に対して30%程度減収する可能性がある(表1、2)。
  • 作型や気象変動による減収を勘案して移植に対する直播単収を想定した試算では、直播・機械収穫一貫体系の農業所得は、 35ha規模以上になってはじめて移植・機械収穫体系を上回ると試算され、大規模層での活用が示唆される。20~30ha層での一貫体系導入のための減収 の許容限界は移植の10%以内と推定される(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 現段階では、直播栽培の減収率が高いため、収穫を機械化せず直播栽培のみを導入した場合には農業所得は低下するため、直播栽培単独での収益面での有利性はない。
  • トレーラ伴走式の収穫体系の導入に当たっては、トレーラ走行路を念頭に置いた圃場利用計画により土地利用率を低下させないように留意すること。

具体的データ

表1 調査施設の搬入材料と搬出堆肥の水分、乾物分解量と水分蒸発量

 

図1 トレーラ伴走方式機械収穫導入によるキャベツ作面積の変化と投資限界

 

表2 現地実証圃におけるキャベツ単収

 

図2 トレーラ伴走方式の機械収穫による作業姿勢の変化

 

表3 直播栽培の減収率の違いによる移植・機械収穫体系と直播一貫体系の所得差の試算結果

 

その他

  • 研究課題名:畑作物・野菜の新作付体系の経営的評価と地域支援システムの開発
  • 課題ID:04-01-03-01-06-03
  • 予算区分:交付金プロ(大規模畑作)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:天野哲郎、八谷満(生研センター)、山縣真人、小島誠、坂本英美、若林勝史
  • 発表論文等:
    1)天野哲郎、八谷満、吉川好文、若林勝史(2002)日本農業経済学会論文集:6-8.
    2)天野哲郎、八谷満(2002)農業技術、57(9):385-390.