ガレガを主体とした年1回刈り採草地の管理法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ガレガを利用することにより、標準施肥量の2/3施肥、掃除刈り無し、遅刈り年1回刈りの採草地の省力管理が可能である。この管理法で、 チモシー・シロクローバ草地を1回刈りする場合よりも高い粗タンパク質収量が得られ、チモシー・ガレガ草地を2回刈りする場合の7割強の乾物収量が得られ る。

  • キーワード:ガレガ、チモシー、遅刈り、年1回刈り、粗タンパク質収量
  • 担当:北海道農研・畜産草地部上席研究官・草地生産研究室
  • 連絡先:電話011-857-9237、電子メールkanazawa@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

集約的な管理が困難で省力型管理をせざるを得ない採草地がある。そこでは少ない施肥量で遅刈り1番草のみの収穫で、適度な生産性・品質が 得られる管理法が必要である。減肥のためにはマメ科牧草が必要であるが、その候補として、越冬性や永続性に優れ、遅刈りによる品質低下が少ない新草種ガレ ガがある。ただし、ガレガは初期生育が緩慢であり、雑草との競合を回避するために、チモシーとの混播が推奨されている。そこで、ガレガをチモシーと混播 し、その遅刈り年1回刈り適性を検討する。

成果の内容・特徴

  • 大規模酪農地帯である宗谷・根室・釧路管内の酪農家126戸を対象とした聴き取り調査の結果、年1回刈り採草地を所有する農 家戸数は26%であり、その面積は、年1回刈り農家の採草地面積の23%に及ぶ。このような採草地に対する農家の要望は、標準施肥量の6割の施肥量で、掃 除刈りせずに、8割の収量を得ること、と要約される。
  • 一般的な混播草地であるチモシー・シロクローバ草地(TY・WC草地)を1回刈りする場合に比べ、チモシー・ガレガ草地 (TY・GA草地)を1回刈りする方が粗タンパク質(CP)収量は高い。一方、乾物及びTDN収量は大差が無い。また、CP含有率はTY・GA草地で高 く、TDN含有率は差が無い(表1の2、3年目平均値)。従って、品質面で優るTY・GA草地の方がTY・WC草地よりも1回刈りに適する。
  • 1回刈りにより、TY・GA草地はGA主体草地に変化し、TY・WC草地はTY主体草地に変化する(図1)。従って、マメ科牧草による窒素減肥効果は、TY・WC草地では低下し、TY・GA草地では大きくなると考えられる。また、TY・GA草地ではGAが増加するため、GAの利点である遅刈りによる品質低下の少なさが維持されると考えられる。
  • TY・GA草地1回刈り区の乾物収量は、TY・GA草地2回刈り区の年間収量の74%、TY・WC草地2回刈り区の年間収量の85%であり、農家の要望水準(8 割)に近かい(表2、平均値)。
  • 1回刈りによるGAの増加に伴い、倒伏する可能性が生じる。しかし、倒伏によるGAのTDN及びCP含有率の低下は少ない(図2)。また、収穫物の損失の最大値は7%弱である。
  • 1回刈りTY・GA草地で収穫後に再生する草は、冬期の積雪により圧縮されるため、翌年の収穫物への混入は少ない(推定混入率1%)。従って、1回刈りTY・GA草地では掃除刈りは不要である。
  • 以上より、GAを利用することにより、標準施肥量の2/3施肥、掃除刈り無し、遅刈り年1回刈りの省力管理が可能であり、標準的なTY・WC草地を1回刈りする場合よりも高い粗タンパク質収量が得られ、TY・GA草地を2回刈りする場合の7割強の乾物収量が得られる。

成果の活用面・留意点

  • 集約的な管理が困難な条件不利な採草地で、年1回刈りが必要な場合に適用する。
  • 遅刈りのためTDN含有率が50%程度と低いので、泌乳最盛期以外の牛の飼料とする。
  • 道央の褐色火山性土で得られた結果であり、適応地帯はガレガの適応地帯に順じ、気象条件が比較的良好な地域から普及を図る。

  • 平成15年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名及び区分
    「ガレガを主体とした年1回刈り採草地の管理法」(指導参考)

具体的データ

表1 1回刈り草地での乾物・TDN・CP収量( kg / 10a )図1 1回刈り混播草地のマメ科率(乾物%)の変化

 

 

図2 倒伏後のガレガの品質の変化

 

表2 1回刈りチモシー・ガレガ草地の2回刈り草地に対する乾物・TDN・CP収量比

 

その他

  • 研究課題名:低投入・省力型採草地の植生管理技術の開発
  • 課題ID:04-05-04-02-02-02
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1997~2002年度
  • 研究担当者:金澤健二、早川嘉彦