トウモロコシサイレージ給与による乳牛のカリウム排泄量の低減法

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要約

牧草サイレージ多給時には乳牛のカリウム吸収率は95.6~99.9%と非常に高く、また尿中へのカリウム排泄量と尿量が増加する。トウモロコシサイレージを主体に給与すると、乳牛のカリウム摂取量と排泄量の低減並びに尿量の低減が可能である。

  • キーワード:自給粗飼料、カリウム、乳牛、トウモロコシサイレージ
  • 担当:北海道農研・畜産草地部・飼料評価研究室
  • 連絡先:電話011-857-9236、電子メールkume@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

わが国では牧草中のカリウム含量が高く、自給粗飼料多給時には乳牛はカリウムを過剰摂取しやすいが、乳熱予防の観点からカリウム摂取量の 低減が望まれている。そのため、乳牛の栄養管理ではカリウム給与の低減が必要であるが、自給粗飼料多給時における乳牛のカリウム出納の特性についてはまだ 不明の部分が多い。
そこで、粗飼料給与比率を60~100%の範囲内に設定し、乾乳牛、妊娠牛(分娩予定日の2~3週間前)および泌乳牛による計62回の出納試験を行い、乳 牛のカリウム排泄量の生理状態別による特性を明らかにするとともに、乳牛のカリウム摂取量と排泄量の低減法について検討する。

成果の内容・特徴

  • 給与飼料中の平均カリウム含量は乾乳牛(2.46%)、妊娠牛(1.95%)および泌乳牛(1.96%)であり、日本飼養標準(1999)の乾乳(妊娠)牛および泌乳牛のカリウム要求量である0.65および0.80%よりも2倍以上高く、自給粗飼料多給時には乳牛はカリウムを 過剰摂取している。
  • 自給粗飼料多給時における乳牛のカリウム吸収率は非常に高く、カリウム摂取量とカリウム吸収量の回帰式から求めた乾乳牛、妊娠牛および泌乳牛のカリウム吸収率は、95.6~99.9%の範囲にある(図1)。
  • 乳牛は体内に吸収したカリウムの大部分を尿中に排泄するが、乾乳牛、妊娠牛および泌乳牛とも尿中へのカリウム排泄量の増加とともに尿量が増加し、尿中カリウム排泄量が1g増加すると尿量は64~73g(平均70g)増加する(図2)。
  • トウモロコシサイレージを主体に給与すると、乳牛のカリウム摂取量、尿中へのカリウム排泄量および尿量が減少する(表1)。自給粗飼料多給時にはカリウム含量の低いトウモロコシサイレージ給与により、乳牛のカリウム摂取量と排泄量の低減並びに尿量の低減が可能である。

成果の活用面・留意点

  • カリウム含量の高い自給粗飼料多給時における乳牛のカリウム摂取量と排泄量の低減法として活用できる。
  • トウモロコシの栽培では、施肥基準に従うことが必要である。
  • 乳牛の尿量増加にはカリウム以外に尿中への窒素、ナトリウム排泄量、飼料の乾物含量なども影響しているため、他の要因についても考慮することが必要である。

具体的データ

図1,乾乳牛(◇)、妊娠牛(△)および    泌乳牛(■)のK摂取量とK吸収量の関係

 

図2,乾乳牛(◇)、妊娠牛(△)および泌乳牛(■)の尿中K排泄量と尿量の関係

 

表1、粗飼料給与時における乾乳牛のカリウム(K)出納

 

その他

  • 研究課題名:粗飼料多給時における乳牛からのメタン・窒素・リン排泄量低減技術の開発
  • 課題ID:04-05-02- *-10-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2005年度
  • 研究担当者:久米新一、野中和久、大下友子、小酒井貴晴、小島英紀(京大)
  • 発表論文等:久米・野中・大下 (2003) 北海道農研研報 178:21-34.