クローバをコムギの前後作に用いたダイズシストセンチュウ密度低減効果

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要約

コムギの前作または後作にアカクローバまたはクリムソンクローバを栽培し、すき込むことによって、ダイズシストセンチュウ密度を低減できる。クローバの栽培期間を十分取り、非寄主作物栽培を加えた4年輪作を行うことで、感受性ダイズの栽培が可能になる。

  • キーワード:クローバ、コムギ、ダイズシストセンチュウ、防除、緑肥作物
  • 担当:北農研・畑作研究部・環境制御研究チーム
  • 連絡先:電話0155-62-9276、電子メールnarabu@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境、共通基盤・病害虫(虫害)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ダイズシストセンチュウは高い耐久性を持つシストを形成し、その中で卵は長期間生存するため、殺線虫剤の使用や従来の輪作体系では防除が 不十分である。マメ科緑肥作物、特にクローバ類の栽培は、シスト内卵の孵化を促進し、孵化した線虫の捕獲効果(栽培の作用は不自然)もあるため、線虫密度 の低減に有効である。そこで、クローバ類の栽培を北海道の畑作地帯に導入し、効率的に線虫密度を低減する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • ダイズシストセンチュウ汚染圃場において、コムギの前作または後作にアカクローバ/クリムソンクローバを導入した場合、2年 間で卵密度は初期密度の3~7 %(非寄主作物の輪作では2年間で同約21%)まで減少する。クローバの種類・栽培時期別効果では、1) コムギ後作アカクローバ栽培-翌年6月すき込み、2) 4月下旬から秋まきコムギの前作(休閑)でクリムソンクローバ栽培・すき込み、3) 同期間でアカクローバ栽培・すき込み、4) コムギ後作アカクローバ栽培-4月末すき込み(-ジャガイモ栽培)、の順番となり、クローバの栽培期間が長いほど線虫密度低減効果が高い(図1)。
  • 後作ダイズ栽培においてダイズ根へ寄生する雌成虫数についても、クローバ作を導入した場合は非寄主作物の輪作と比べ1/4以下となる(図2)。
  • 1の方法と非寄主作物栽培を組み合わせた4年輪作を行うと、1)の方法では乾土1gあたり100卵以上の線虫高密度圃場を感受性ダイズ栽培が可能な密度(同10卵未満)に低減でき、休閑なしで作物栽培が可能な4)の方法でも、それに近い効果が得られる(図3)。
  • コムギ収穫後の8月からクリムソンクローバを約2か月栽培し、当年内にすき込む方法では、無処理と比較し3割程度卵密度が減少する(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 線虫抵抗性ダイズを利用できない圃場(寄生性レースの発生、特定品種の栽培等)や高密度汚染圃場でのダイズシストセンチュウ害対策に活用できる。
  • クローバ類は2~3kg/10aの散播とし、必要に応じて施肥(2-5-5kg/10a程度)を行う。栽培後はプラウ耕等によるすき込みを十分に行い、クローバの雑草化を防ぐ。
  • クローバ類は初期生育が遅く雑草との競合に弱いため、特に早春播種を行うとき、雑草発生の多い圃場では有効な雑草対策が必要である。

具体的データ

図1 クローバ類とコムギの輪作*によるダイズシストセンチュウ卵密度の減少 (十勝管内現地圃場)

 

図2 現地圃場の試験土壌を用いたダイズのポット栽培における雌成虫寄生数

 

図1、2の注意

 

図3 アカクローバを導入した輪作*と慣行の輪作でのダイズシストセンチュウ卵密度減少(*輪作略号は図1に準ずる)

 

図4 コムギ後作にクローバ類を2か月栽培したときの卵密度の減少

 

その他

  • 研究課題名:対抗植物と有機物施用等による線虫防除技術の実証
  • 課題ID:04-04-02-*-13-03
  • 予算区分:IPM
  • 研究期間:2002~2003年度
  • 研究担当者:奈良部孝、竹中重仁
  • 発表論文等:奈良部 (2003) 北日本病虫研報 54: 193-196.