アルストロメリアの汁液硝酸およびカリウム濃度の変動とその要因

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要約

アルストロメリア葉身汁液の硝酸およびカリウム濃度は施肥量を反映し、診断指標として利用可能である。しかし、特に硝酸濃度は採花量と連動した季節変動や年次変動など栄養状態以外の条件で変動する割合が大きい。

  • キーワード:アルストロメリア、栄養診断、診断指標、汁液、硝酸、カリウム、窒素
  • 担当:北海道農研・生産環境部・養分動態研、北海道花野技セ・研究部・園芸環境科
  • 連絡先:電話 011-857-9243、電子メール mtakebe@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

北海道のハウス栽培において、通年利用による長期栽培作物の導入が進んでいる。寒地での栽培に適した花卉アルストロメリアは定植後2年間は植え替えなしに栽培されるが、このような長期採り作物に対して施肥判断のための栄養診断技術が要望されている。そこで、アルストロメリアを窒素(N)とカリウム(K)栄養を変えてポットおよび養液土耕栽培し、生育にともなう汁液中硝酸およびカリウム濃度の推移とその変動要因および栄養診断指標としての可能性について検討する。

成果の内容・特徴

  • 汁液硝酸濃度の窒素処理間差は葉身の方が茎より明瞭である。上位葉身汁液の硝酸濃度は窒素施用量にともなって上昇するが、特 に標準の2倍量の施肥で濃度が高まり、時期による変動が大きくなる。切り花収量の多い1Nおよび1.5N処理(表1)では秋に1000 mg L-1以下、1月以降は500~3000 mg L-1で推移する(図1)。
  • 汁液硝酸濃度は採花の始まった秋に低く、冬に高まり、5、6月に再び低下する。切り花収量が多い時期に濃度が低く、切り花収量が少ない時期に濃度が高まる傾向があり(図2)、季節による採花量の変動が汁液硝酸濃度の変動の一因である。
  • 汁液硝酸濃度は年次によっても変動する(図3)。2002~2003年の試験では2001~2002年の試験より切り花の乾物生産量が少なく(図4)、窒素吸収量は変わらないため、乾物率が低く全窒素含有率の高い切り花が採れたが、このような切り花では汁液硝酸濃度が高くなることが示された。このように高い濃度で推移する場合は、日射量の低下等、何らかの生育阻害要因が存在すると判断できる。
  • 汁液カリウム濃度は葉身で茎より高く、処理間差も明瞭である。上位葉身において、切り花収量の多い1N 1.5K処理(表1)では秋に5000~5500、1月以降は7000~9000 mg L-1であり、硝酸濃度ほど大きな変動は見られない(図5)。
  • 汁液硝酸およびカリウム濃度は施肥量を反映し、診断指標として利用可能である。しかし、特に硝酸濃度は採花量と連動して季節変動し、また、年次変動もあるなど、栄養状態以外の条件で変動する割合が大きい。

成果の活用面・留意点

  • 各種作物で実用的な診断基準値の作成を進めるときは、栄養条件以外の変動を予測し、考慮する必要がある。
  • 本成果のうち図2は養液土耕栽培試験から、その他はポット試験から得られた結果である。

平成15年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
課題名:アルストロメリアの養液土耕栽培における施肥灌水基準(指導参考)

具体的データ

表1 ポット試験の処理および収量等 図1 汁液硝酸濃度の推移(上位葉身) 図2 切り花収量と葉身汁液硝酸濃度の関係(養液土耕栽培、標準区) 図3 汁液硝酸濃度の年次間差(上位葉身) 図4 切り花乾物重の年次間差 図5 汁液K濃度(上位葉身、1N処理)の推移

その他

  • 研究課題名:迅速な栄養診断技術の各種作物への応用、迅速栄養診断法を活用した省資源型栽培技術の確立
  • 課題ID:04-06-04-*-04-03
  • 予算区分:交付金プロ(地域実用化)、地域実用化
  • 研究期間:1999~2003年度
  • 研究担当者:建部雅子、藤倉潤治(北海道花野技セ)、岡崎圭毅、唐澤敏彦、笠原賢明