分光光度計を用いたタマネギのケルセチン含量の簡易評価法

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要約

タマネギのケルセチン配糖体含量は、球から櫛形に切り取りフードプロセッサーで細断した試料を80%メタノールで抽出し,その吸光度(360nm)を分光光度計で測定することにより,慣行のHPLC法よりも簡便に評価できる。

  • キーワード:タマネギ,ケルセチン,分光光度計,簡易評価法
  • 担当:北海道農研・作物開発部・上席研究官、野菜花き研究室
  • 連絡先:011-857-9306、ynogu@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・作物、野菜茶業・野菜育種
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

タマネギには抗酸化活性の高いケルセチンや含硫化合物などの機能性成分が含まれており、機能性成分含量が高い品種の育成が期待されている。そこで、高機能性品種育成の効率化を図るため、分光光度計によるケルセチン含量の簡易評価法を開発する。

成果の内容・特徴

  • タマネギ球内のケルセチン分布には偏りがあることから(図1)、各部位が均等になるように櫛形に切り取り、ナイフカッター(IFM-MS-K)を装着したフードプロセッサー(岩谷産業,ミルサーII IFM-200)で汁液が浸出しない程度に細断する。
  • 細断した試料から10gを秤量して、5~8倍量の溶媒(80%メタノール)中で24時間室温で静置し,ろ過後残渣を溶媒で洗浄,ろ液と洗浄液を合わせて100mlとした抽出液の吸光度(検出波長360nm)を測定する。
  • 試料の細断・均一化には、操作が簡便で、ろ過時間が短く、作業時間が大幅に短縮できることから、慣行法のホモジェナイザーよりもフードプロセッサーが優れている(図2)。
  • ホモジェナイザーを用いた慣行法による含量と簡易法による吸光度には高い相関関係がある(図3)ことから、吸光度を比較することによりケルセチン含量を簡便に評価できる。
  • 簡易法では液体高速クロマトグラフィーを用いないため、前処理フィルターおよび移動相溶媒のコストが削減でき、分析時間も大幅に短縮できる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • タマネギの育種場面などにおける、品種・系統の簡便評価法として利用できる。
  • 本評価法は吸光度による相対的評価であるため,利用に当たっては標準品種を加えること。
  • フードプロセッサー(岩谷産業,ミルサーII IFM-200)で一度に処理する試料の量は、細断および均一化の面から100~200gとする。
  • 分光光度計による測定時には、吸光度が1以下になるように抽出液を希釈して用いる。

具体的データ

図1 タマネギ球内部位によるケルセチン含量の差

 

図3 慣行法によるケルセチン含量と簡易法による吸光度との関係

 

図2 慣行法と簡易法でのろ過時間の差

 

図4 慣行法と簡易法による分析操作および時間の比較

 

その他

  • 研究課題名:高機能性タマネギ品種の育成
  • 課題ID:04-03-03-02-11-03
  • 予算区分:国産野菜プロ・ブラニチ6系
  • 研究期間:2002~2003年度
  • 研究担当者:野口裕司、室 崇人、森下昌三、岡本大作(北海道大学)