おとり植物を用いたジャガイモ粉状そうか病菌の土壌汚染程度評価法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

土壌を懸濁した水耕培養液中でおとり植物(トマト)を栽培し、その根部に感染した粉状そうか病菌量(感染ポテンシャル)をPCR法で定量することによって、土壌の粉状そうか病菌による汚染程度が評価できる。

  • キーワード:ジャガイモ粉状そうか病、おとり植物、PCR法、感染ポテンシャル、土壌汚染程度評価法
  • 担当:北海道農研・生産環境部・病害研究室
  • 連絡先:電話011-857-9277、電子メールtakato@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ジャガイモ粉状そうか病による被害を回避するためには、同菌による土壌の汚染程度を把握することが不可欠である。しかし本菌は絶対寄生菌 であることから、菌の培養を伴う希釈平板法等の方法では土壌中の菌量を定量することは不可能で、また胞子球に対するELISA法も開発されているが検出感 度等の面で実用には難点がある。そこでトマトをおとり植物として、供試土壌を懸濁した水耕培養液で栽培し、根部に感染した菌量をPCR法で定量することに より、本菌による土壌汚染程度を評価する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 土壌汚染程度評価法の概要を図1に示す。土壌試料は風乾後、水耕培養液に懸濁し、おとり植物(トマト)根部浸漬前に1週間程度前培養する。このことにより粉状そうか病菌のトマト根部への感染効率が高まる。
  • トマト根部に感染した粉状そうか病菌量(感染ポテンシャル)を定量するために、あらかじめ一定量の胞子球を抽出して得たDNAをテンプレートとして定量PCRを行い、検量線を作成する(図2)。この検量線を利用して感染菌量を新鮮根1gあたり胞子球当量数(spore ball equivalent unit; sbu)として算出し、これを土壌の感染ポテンシャルとする。
  • 今金町ならびに八雲町内の18圃場より採取した土壌試料について感染ポテンシャル、胞子球密度(Bellら(1999)に準 じてPCR法で定量)を調べ、また同一圃場での堀取りによるいも(品種:男爵薯)の発病度を調査したところ、土壌の感染ポテンシャルが高い圃場ではいもの 発病度も高い傾向が認められる(表1)。
  • PCR法で土壌試料からの胞子球の検出が困難な場合でも、本方法では感染ポテンシャルを検出することが可能であり(表1、圃場3、6、7)、土壌中の胞子球密度と比較して、感染ポテンシャルは圃場における発病度とより相関が高い。
  • 本方法を用いると、土壌試料の前培養開始から9日程度で感染ポテンシャルが判明し、粉状そうか病菌による土壌の汚染程度を評価することができる。

成果の活用面・留意点

  • 発病度の低い圃場の試料の場合、感染ポテンシャルが検出できない場合がある(表1、圃場8)。
  • 男爵薯以外の品種に対しては感染ポテンシャルと発病度の関係が男爵薯に対する場合と異なるので、その場合両者の関係を別途検討する必要がある。

具体的データ

図1 土壌汚染程度評価法の概要

 

図2 胞子球数の検量線

 

表1 現地圃場より採取した土壌試料の胞子球密度、感染ポテンシャルと発病度の関係

 

その他

  • 研究課題名:ジャガイモ粉状そうか病菌菌株間における病原性分化の解明
  • 課題ID:04-06-01-02-15-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:中山尊登、島貫忠幸