南空知地域における集落レベルの営農再編方向

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要約

良食味米生産困難な南空知地域における水田土地利用確立のための営農再編方向は、集落における栽培技術向上に向けた作物別部会の組織化と作業の効率化・低コスト化を進める作業受委託体制整備、さらに生産振興機能強化のための集落の統合・再編である。

  • キーワード:南空知、水田土地利用、作物別部会、作業受委託体制、集落の統合・再編
  • 担当:北農研・総合研究部・経営管理研究室
  • 連絡先:電話011-857-9310、電子メールtsuneo@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・総合研究
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

南空知地域など良食味米生産困難な地域では、米価下落による経営収支悪化や戸数減少による集落機能の低下が進む中で、転作作物の積極的活 用による水田土地利用確立が求められており、転作作物の単収・品質向上および低コスト化と作業効率向上を図る営農体制の再編整備が緊急の課題となってい る。そこで小麦・大豆作を増加させつつある南空知地域K村の先進事例を分析し、水田土地利用確立のための営農再編方向を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 南空知地域のK村のB地区では、平成10年以降、転作割合を高めつつ小麦・大豆を増加させるとともに(図1)、 小麦において10俵近い高単収を上げており、同地区の小麦収益性は転作奨励金を考慮せずとも水稲を上回る高水準にある。大豆においても同様に収益性を高め ており、地域における水田土地利用確立の先進的な事例である。さらにB地区の活動は他の地区へも移転され、転作作物の単収・品質向上が図られつつある。
  • B地区におけるこのような単収・品質向上を可能とした要因を分析すると、作物別部会組織化による栽培技術向上、作業受委託体制整備による作業の効率化・低コスト化、さらに生産振興機能強化のための集落の再編・統合が大きく影響している(図2)。
    1)作物別部会の組織化は、面識のある地域単位でのつながりを強め、農家相互の切磋琢磨により技術の主体的取得へと意識改革をもたらし、栽培技術を向上させる。B地区では小麦・大豆等作物別部会が平成10年に組織され(表1)、これ以後小麦・大豆作付けが増加した。同地区では排水対策の啓発、土壌診断に基づく施肥設計指導に加え、巡回方式での現地講習会開催による農家相互の切磋琢磨が単収向上を可能としたのである。
    2)作業受委託体制については、従来からある小麦の収穫・乾燥調製組織について、大豆の播種・収穫も行う組織への機 能拡充とともに、中心となる組織と他の組織との相互連携の強化により機械・施設の有効利用が強化され、その結果、小麦だけでなく大豆も含めた作業の効率 化・低コスト化が可能となる。B地区では、3組織ある小麦の乾燥センターの1組織(W社)で平成10年に大豆の播種・収穫を開始し(表1)、作業受託を増加させ、そのことが地区内の大豆作付け増加を可能とした。また面積増加に伴い、他組織へも受託を斡旋し、地区全体としての機械・施設の有効利用が図られている。
    3)集落の統合・再編は、離農増加による集落機能低下を抑制する役割を果たし、生産組織化や土地利用調整等の集落における生産振興機能の維持・強化を可能とする。B地区でも平成11年に4集落から2集落への集落再編が行われたことが大きな意味を有する。
  • B地区での水田土地利用確立に向けた営農体制再編は、K村H地区へ波及しており、平成14年に小麦等部会の新たな組織化、 15年に4集落から3集落への再編が行われ、その結果、小麦単収が9俵水準に向上している。以上のように、集落を単位とする作物別部会の組織化、作業受委 託体制整備、さらに集落の再編を並行して実施することが水田土地利用確立に有効であることが確認できる。

成果の活用面・留意点

  • 良食味米生産が困難で転作へのシフトが見込まれる南空知等の地域において、小麦・大豆作の単収・品質向上等による水田土地利用確立に活用できる。

  • 平成15年度北海道農業試験会議における課題名及び区分
    課題名:水稲立地を踏まえた南空知水田農業の再編手法(指導参考)

具体的データ

図1 B地区における小麦・大豆等の推移

 

表1 B地区における営農体制の推移

 

図2 図2 集落における今後の組織化のあり方(模式図)

 

その他

  • 研究課題名:寒地大規模水田利用方式の成立条件と作業受託組織の運営管理方策の解明
  • 課題ID:04-01-02-01-06-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:仁平恒夫、坂本英美、相原克磨
  • 発表論文等:仁平(2003).農業の基本問題に関する調査研究報告書,29.(財)農政調査委員会.