北海道酪農の規模階層別農家数の動向予測

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

北海道酪農の農家数は中小規模層で減少し、2000年から2020年までに38%減少すると予測されるが、2020年においても2歳以上乳用牛飼養80頭 未満酪農家割合は60%を占める。酪農経営の規模別分布には地域性がみられ、将来の地域酪農の担い手の存在状況をふまえた地域営農施策の検討が必要であ る。

  • キーワード:酪農経営、規模階層別農家数、動向予測、地域性
  • 担当:北海道農研・総合研究部・動向解析研究室
  • 連絡先:電話011-857-9308、電子メールukawa@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・総合研究
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

北海道酪農の発展方向として経営外部化を積極的に進める大規模経営と個別完結的な中規模経営(耕地面積40~60ha、2歳以上乳用牛飼 養50~80頭程度)の2つが想定される。地域におけるこれら2種類の経営の賦存状況が、地域営農施策(地域支援システムや農地集積対策)のあり方に大き な影響を与える。
そこで、北海道の主要な酪農生産地域における経営耕地面積規模階層別ならびに2歳以上乳用牛飼養頭数規模階層別にみた酪農家数の動向予測を網羅的・定量 的に明らかにするために、1995年及び2000年の農業センサス個票から動態表を作成し、この動態表にマルコフ分析を適用し、2020年までの酪農家数 を5年刻みで推計した。

成果の内容・特徴

  • 北海道全体の酪農家数は2000年の9,271戸から2020年には38%減少し5,754戸になると予測されるが、経営耕地面積規模階層別にみると60haが増減分岐点になり、60ha未満層は減少するのに対し60ha以上層は増加する(表1)。同様に、2歳以上乳用牛飼養頭数規模階層別にみると80頭が酪農家数の増減分岐点になる(表2)。その結果、60ha未満酪農家割合は2000年の77%から2020年には46%に、同様に2歳以上乳用牛飼養80頭未満酪農家割合は2000年の83%から2020年には60%に低下するが、中規模経営の農家割合は依然として高い。
  • 2020年までの酪農家数の動向予測には地域性(支庁・市町村)がみられる。規模階層別農家数の2020年予測から支庁別の 階層分布の特徴をみると、根室支庁と釧路支庁は耕地面積、2歳以上乳用牛頭数ともに中規模と大規模に2つのピークをもつ階層構成に、宗谷支庁と留萌支庁は ともに中規模に集中した階層構成になる(図1、2)。 一方、十勝支庁の耕地面積は中規模に集中するのに対し、2歳以上乳用牛頭数は大規模から中規模に分散すると予測される。市町村の動向は概ね支庁平均の動向 に一致するが、十勝支庁の2歳以上乳用牛頭数に関する予測は市町村による差異が大きく、このことがピークの未形成をもたらしている。
  • 以上より、酪農経営の経営耕地面積および2歳以上乳用牛飼養頭数の規模階層別分布は地域により大きく異なると予測されることから、将来の地域酪農の担い手の存在状況をふまえた地域営農施策の検討が必要である。

成果の活用面・留意点

  • 地域別(支庁・市町村)の予測結果を提供することができる。
  • 1995年から2000年までのトレンドに基づく動向予測である。動態表の作成および推計値の算出には安武正史(近中四農研)作成のプログラムを使用した。

具体的データ

表1 酪農家の経営耕地面積規模別階層構成変化の将来予測(北海道)

 

表2 酪農家の2歳以上乳用牛飼養頭数規模別階層構成変化の将来予測(北海道)

 

図1 支庁別にみた面積規模別農家数

 

図2 支庁別にみた乳用牛頭数規模別農家数

 

その他

  • 研究課題名:集約放牧技術導入のための経営条件の解明
  • 課題ID:04-01-01-01-07-03
  • 予算区分:交付金プロ
  • 研究期間:2003~2006年度
  • 研究担当者:鵜川洋樹、細山隆夫、藤田直聡
  • 発表論文等:鵜川ほか(2004)北海道農業研究センター研究報告180:41-138.