全ジャガイモウイルスを迅速に同時検出できるマクロアレイの作製

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要約

日本で発生が確認されている12種のジャガイモウイルス全てを検出できるマクロアレイを作製した。本アレイを利用することによって高感度かつ迅速に全ジャガイモウイルスを同時検出できる。

  • キーワード:ジャガイモ、ウイルス、検出、マクロアレイ、遺伝子診断
  • 担当:北海道農研・生産環境部・ウイルス病研究室
  • 連絡先:電話011-857-9278、電子メールmaokat@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

ジャガイモは栄養体で増えるため、種いもにウイルスが感染すると、大きな被害をもたらす。日本で発生が確認されている12種のジャガイモウイルスのうち、効率的検出法が確立されているのはわずか4種にすぎないため、検疫、育種、種いも生産に支障が生じている。そこで、検出特異性の高いマクロアレイを用いて、全ジャガイモウイルスを高感度かつ迅速に検出できる遺伝子診断法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 日本で発生が確認されている12種のジャガイモウイルス(表1)について、各ゲノムRNAの特定領域をクローニングし、PCRで300-800bp程度のcDNA(キャプチャープローブ)を増幅して、 2.5cm×6.5cmのナイロンメンブレンに1ウイルスあたり4個所スポットしたマクロアレイを作製した(図2)。
  • 検体としてウイルス感染植物50mgからRNAを抽出し、各ウイルス特異的プライマーセットを用いたRT-PCRでビオチン標識し、マクロアレイ解析を行うと、マクロアレイ上の発光反応あるいは発色反応として各ウイルスを特異的に検出できる(図1、図2)。
  • 本法では、検体からのウイルスRNA抽出(Trizol,Invitrogen)から、RT-PCR、cDNAのビオチン標識(Gene Navigator,TOYOBO)、化学発光反応(Phototope Star Detection Kit for Nucletic Acids,NEB)、化学発色反応(NBT/BCIP,Roche)まで、市販のキット・試薬類を使用できる。
  • これまで実用的な検出法がなかったウイルスを含め、わが国で発生が確認されている全ジャガイモウイルスを同一条件で短時間(28時間)に同時に検出できる。

成果の活用面・留意点

  • 本検出法はジャガイモ種いも生産におけるウイルス病診断や検疫等に利用できる。
  • 塊茎伝搬が確認されていないToRSVの検出に際しては、感染葉を検定用試料として用いる。

具体的データ

表1.日本で発生が確認されているジャガイモウイルス

図1.マクロアレイ利用によるジャガイモウイルス検出手順図2.マクロアレイによる各ジャガイモウイルスの検出例それぞれ感染植物から抽出したRNAを検出した。

その他

  • 研究課題名:ジャガイモ生産を支えるウイルス遺伝子診断技術の開発
  • 課題ID:04-06-01-*-22-04
  • 予算区分:交付金(2004年度研究開発ターゲット関連重点研究課題)
  • 研究期間:2004年度
  • 研究担当者:眞岡哲夫、畑谷達児(北大院農)、早野由里子、福本文良
  • 発表論文等:1) 眞岡ら (2005) 平成17年度日本植物病理学会大会
                      2) 日本経済新聞朝刊2005年1月7日35面(北海道経済版)