秋まき性が高い小麦を用いた大豆リビングマルチ栽培の雑草抑制効果

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要約

大豆の播種適期に秋まき性の高い小麦を大豆と一緒に播種すると、小麦はリビングマルチとして地表面の被覆を早め、雑草を抑制したのち自然に枯死する。リビングマルチ栽培に加えて大豆播種後に除草剤を土壌処理すると、機械・手取り除草と同程度に雑草を抑え、大豆を密植にすることで雑草抑制効果が高まり、減収も緩和される。

  • キーワード:リビングマルチ栽培、秋まき小麦、雑草抑制、ダイズ、密植
  • 担当:北海道農研・総合研究部・大豆研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9300、電子メールtuzihiro@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・総合研究、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

北海道における大豆生産の省力化には、中耕除草と手取り除草の大幅な短縮化をはかる必要がある。東北地方では大麦を用いたリビングマルチ大豆生産による雑草制御が有望視されており、北海道でも麦類を利用して雑草を制御できる可能性は高い。そこで、北海道で一般的に生産されている秋まき性が高い小麦(以下小麦)の出穂特性と地表面被覆の早さを活用し、大豆・小麦の同時播種による大豆のリビングマルチ栽培による雑草抑制効果を評価する。また、リビングマルチ栽培では競合により大豆が減収するおそれがあるので、大豆密植による減収緩和効果の解明を行い、北海道における省力・減除草剤雑草防除体系を確立する。

成果の内容・特徴

  • 図1に示した作業体系で小麦種子8~16kg/10aを大豆と同時期に播種すると、小麦は大豆より1~数日早く出芽し、地表面の被覆が慣行大豆畑より早まるため、雑草の抑制に利用することができる。小麦は8月上旬から自然に枯死しするため、小麦の刈取り、抜取りは不要である。
  • リビングマルチ栽培で大豆の栽植密度を高めると雑草抑制効果は高まる(図2)。
  • 大豆播種後の除草剤土壌処理を組み合わせたリビングマルチ栽培では、開花盛期まで機械除草・手取り除草を行うのに近い雑草抑制効果を示す(図3)。収穫前の拾い除草にかかる労働時間は0.4~0.8h/10aであり、慣行の除草体系と大差なく、機械除草・手取り除草を省略する分の省力化が可能である。
  • リビングマルチ栽培では、播種後20日頃まで大豆と小麦の草丈が同じであり、大豆の葉色は開花期まで慣行栽培に劣る。生育初期の競合により大豆の生育は抑制されて減収するが、大豆を30本/m2以上の密植とすることにより大幅な減収を回避できる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は小麦品種には主に「ホクシン」を、大豆品種に「ユキホマレ」を供試した場合の結果であり、当面はユキホマレを対象とした技術とする。
  • 大豆播種後に除草剤の土壌処理をおこなわない場合、リビングマルチによる雑草抑制効果は大豆開花期の機械除草の効果に及ばない。
  • 大豆の収穫時には小麦はまれにしか残らないが、残存した場合には翌年出穂・結実する可能性がある。後作に間作小麦を栽培する輪作体系にはリビングマルチ栽培を導入せず、大豆収穫後には耕起を行う。
  • 施肥量は慣行大豆栽培の基準に従う。

具体的データ

図1 小麦を用いた大豆リビング マルチ栽培の播種前後の 作業と小麦の消長図2 大豆リビングマルチ栽培の雑草抑制    効果に及ぼす大豆の栽植密度の影響

図3 大豆リビングマルチ栽培の収穫期の雑草乾物重    および拾い除草を要する雑草数

図4 大豆リビングマルチ栽培の相対収量   に及ぼす栽植密度の影響

その他

  • 研究課題名:除草剤使用低減のための総合的雑草防除技術の開発
  • 課題ID:04-01-04-*-06-04
  • 予算区分:ブラニチ2系
  • 研究期間:2003年~2005年
  • 研究担当者:辻 博之、大下泰生、渡辺治郎