コムギの雪腐病抵抗性に影響を及ぼすハードニング時の環境要因

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要約

コムギの雪腐病抵抗性の発現には、ハードニング時の温度と土壌水分量、およびハードニング期間が影響を及ぼす。抵抗性の評価においては、圃場試験では排水の良い圃場を用い、人工環境では、土壌水分量、温度の試験区間差が生じないよう留意する必要がある。

  • キーワード:コムギ、雪腐病、抵抗性、ハードニング、土壌水分量
  • 担当:北海道農研・地域基盤研究部・育種工学研究室、畑作研究部・麦育種研究室
  • 連絡先:電話011-857-9478、電子メールiriki@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・基盤研究
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

コムギの雪腐病抵抗性の発現は環境による変動が大きく、精度の高い抵抗性評価法の確立のためには、抵抗性の発現に必要なハードニングに関する要因を明らかにする必要がある。Microdochium nivale によって引き起こされる紅色雪腐病においては、温度,期間の影響が指摘されているが、Typhula ishikariensis による雪腐黒色小粒菌核病では報告がない。また、土壌水分量と雪腐病抵抗性の関係については全く明らかにされていない。そこで、これらの要因が雪腐病抵抗性の発現に与える影響を人工気象器を用いて解析する。

成果の内容・特徴

  • 雪腐病抵抗性強・弱品種ともに,ハードニング期間の増大に伴い、雪腐病抵抗性は一旦低下するが、その後高まる(図1A)。
  • 雪腐病抵抗性強・弱品種ともに,ハードニング温度は大きな影響を及ぼし、2℃よりも4℃のほうが高い雪腐病抵抗性を誘導する(図1B)。
  • 雪腐病抵抗性強・弱品種ともに,ハードニング時の湿潤な土壌条件は雪腐病抵抗性を低下させる(図2A)。
  • 雪腐病抵抗性強・弱品種ともに,土壌水分量は全茎数に影響を与えない(図2B)ことから、湿潤条件での生存茎率の低下は土壌の過湿によって引き起こされる生育阻害ではなく、雪腐病抵抗性の低下によるものである。
  • 雪腐病抵抗性極強2品種,強2品種,中1品種,弱1品種(表)においても同様の結果が得られる。
  • 雪腐病抵抗性が高く誘導されるのは、土壌水分が乾燥(水分ポテンシャル=-0.1MPa)、ハードニング温度4℃、ハードニング期間28日の場合であるが、極強と強の品種間差が明確に現れるのは、湿潤(-0.01MPa)、2℃、28日の条件である。(表)。
  • 雪腐病抵抗性の発現には、ハードニング時の土壌水分量と温度が影響することから,雪腐病抵抗性の評価に際しては、圃場試験では排水の良い圃場を用い、人工環境下では、土壌水分量、温度の試験区間差が生じないよう留意する必要がある。

成果の活用面・留意点

  • 雪腐病抵抗性の評価における検定精度の向上に有益な情報となる。
  • 今回得られた結果に用いた雪腐病菌は、雪腐黒色小粒菌核病菌生物型Bである。

具体的データ

図1.ハードニング期間(A)および温度(B)が雪腐病抵抗性に及ぼす影響

図2.土壌水分量が雪腐病抵抗性(A)及び全茎数(B)に及ぼす影響

注)

 

表.ハードニング条件と抵抗性の品種間差の発現

 

その他

  • 研究課題名:コムギ近縁種との交雑による耐凍性、耐雪性素材の開発
  • 課題ID:04-08-01-*-13-04
  • 予算区分:低温ストレス
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:入来規雄、西尾善太