てんさいの温室内小規模世代促進技術

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要約

小型の角鉢に密植したてんさい苗に一定期間(5℃、16時間、150日以上)の春化処理を与えることにより、個体別採種ができ、省力的かつ効率的に後代種子が得られる。

  • キーワード:テンサイ、世代促進、春化処理、採種、自殖系統
  • 担当:北海道農研・畑作研究部・てん菜育種研究室
  • 連絡先:電話0155-62-9271、電子メールktaguchi@naro.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・作物
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

てんさいは二年生の作物であり、圃場条件では結実種子を得るまでに二カ年が必要である。また、種子生産には花粉のコンタミネーションを防止できる施設や圃場が不可欠であり、世代促進に要する労力、コストが大きいため、一年間に取り扱える材料数に制限がある。しかし、てんさいは植物体に春化処理(低温・長日条件)を与えることにより播種当年に生殖生長を人為的に誘導することが可能である。そこで、小型の角鉢に密植したてんさい苗に春化処理を行い、温室内で省力的かつ効率的な小規模の世代促進技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 春化する苗は、25℃常温の温室内で播種後40日目にあたる草丈10cm以上、葉数5枚以上に達した個体を用いる。春化処理条件は、5℃、16時間日長とし、春化処理解除後は、25℃以下の常温の温室において、全日長条件で生育させる(図1)。
  • 春化処理の効果は、系統間差が明らかであり、春化処理日数と系統との間には交互作用が認められる(表1)。また、系統ごとの春化処理日数と開花率は相関が高い(図2)。
  • 春化処理日数は、150日間で8割以上の個体から採種が可能であり、210日間で全系統、全個体から採種が可能である(表2)。
  • 本手法では、温室内で周年採種が可能であり、播種後300日で後代種子が得られる。また、1m2あたりに最大で500個体の後代種子を採種でき、個体あたりの後代種子量は、0.5g(約50粒)程度である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 複数の育種材料を同時に取り扱うことができ、てんさいの親系統の育成が加速される。
  • 開花期の系統内変異は大きいので、自殖系統の増殖に限る。
  • 単粒系統法など集団育種法へ応用できる。

具体的データ

図1 小規模世代促進方法の概要図2 春化処理期間と開花率の相関関係

表1 異なる春化処理条件が開花へ与える影響表2 春化処理日数150日及び210日における複数系統の開花率と開花までの平均日数

その他

  • 研究課題名:てんさい一代雑種育成における選抜及び検定方法の開発
  • 課題ID:04-03-02-*-08-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1999~2008年度
  • 研究担当者:田口和憲、大潟直樹、岡崎和之、高橋宙之、中司啓二
  • 発表論文等:田口ら(2004)第2回てん菜研究会講演発表要旨集、1-2