大豆トラストによる地産地消の推進方策

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要約

現在トラスト運動が抱えている事務局作業の過重負担という問題には、生産者と消費者が直接結び付くように、トラスト畑を産地ごとに分割した上で、消費者のボランティアを活用することが有効となる。その際、農作業体験ができる場を用意して、消費者の関心を「食」から「農」へと誘導し、トラストへのコミットメントを強化することが重要である。

  • キーワード:大豆トラスト、ネットワーク、ボランティア、コミットメント
  • 担当:北海道農研・総合研究部・農村システム研究室
  • 連絡先:電話011-857-9309、電子メールmorisima@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・総合研究、共通基盤・経営
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

自給率向上と地場産業振興を目指し、今、各地で地産地消の取り組みが推進されている。それには様々なタイプがあるが、その中でも特に大豆トラストの取り組みは、その地域の大豆の買い支えを目的として、消費者が減収時のリスク負担をする点で注目されている。しかし、経済的に自立しつつ発展している事例は未だ少ないことから、このトラスト方式により地産地消を展開して行くための方策を提示する。

成果の内容・特徴

  • 現在、北海道に存在する3つの大豆トラストは、それぞれ事業主体・対象地域と産消の規模・事業内容などは異なっているが、何れも収支が不均衡であり、事務局の人件費が賄えないことから、これ以上の拡大は困難であるという問題を共通に抱えている(表)。行政組織が主体となるBでは、運営費を助成金により補填している。一方、A(NPO法人)とC(社団法人)では、会員のボランティアにより人件費の負担を圧縮している。Bも事業の終了時には同様の対応が迫られることになるため、今後のトラストの維持・拡大には、会員消費者の自発的な行為を誘発することが重要である。
  • ボランティアを積極的に活用し、事務局の作業負担を軽減するには、トラスト畑を産地ごとに分割し、生産者と消費者との直接的な結び付きを重視した組織体制に再編することが有効である。その場合、全国的に大規模な展開をしている日本消費者連盟のトラストのように、専従事務局には産地間のネットワークの情報交換を媒介する機能と全体を代表する窓口機能を果たすことが特に求められる(図1)。また産地のリーダーとなりうるような消費者を組織活動の中で事務局が選び出し、養成することも必要である。
  • トラスト(B)の消費者アンケートによると、安全で安価な、とりわけ国産の「食材」を調達することを求めて参加した者は、価格等の条件の変更次第で継続しなくなる可能性が高い(図2)。一方、参加動機がII.料理の学習や産直による「食卓」の充実→III.生産者との「交流」→IV.自分あるいは家族の農業「体験」と展開するにつれてトラストへのコミットメントは強くなるという結果も得られている。
  • この「食」から「農」への参加動機の発展段階において、トラスト(B)では多くの参加者が中間的な段階(II.III)に位置している(図2)。従って、大豆を利用した料理教室、あるいは同じ生産者による大豆以外の農産物の即売会などの活動メニューを先ずは重点的に用意する。その上で、彼らの関心をコミットメントの強化へ向けて誘導するために、除草などの援農体験もオプションとして付けておくのが良い。

成果の活用面・留意点

  • トラスト方式で大豆の地産地消を推進する際に媒介役となる地方自治体やNPO組織の事業計画の策定に資する。

具体的データ

表 北海道における大豆トラストの概要

図1 大豆トラストにおける自律分散型ネットワーク・モデル図2 トラストへの参加動機の発展段階

その他

  • 研究課題名:トラスト方式による地産地消の展開条件の解明
  • 課題ID:04-01-03-01-08-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2004~2005年度
  • 研究担当者:森嶋輝也