稲麦大豆に適用できる汎用ロータリシーダの播種性能と導入効果

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要約

水稲の乾田直播、小麦、大豆の播種作業に適用できる汎用ロータリシーダは砕土、施肥、播種を1工程で行い、作業幅の拡大と工程の省略により作業時間を短縮できる。開発機の導入により慣行体系に比べて限界規模が6ha拡大し、所得が155万円向上する。

  • キーワード:浅耕、汎用ロータリシーダ、水稲乾田直播、コムギ、ダイズ
  • 担当:北海道農研・総合研究部・総合研究第1チーム、経営管理研究室
  • 連絡先:電話011-857-9300、電子メールyohshita@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・総合研究、共通基盤・総合研究、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

稲麦大豆による水田輪作では、播種時期に耕起、砕土、播種など複数の作業工程が重なり、規模拡大の制約要因となる。また、小麦や大
豆など複数の転作作物の導入にあわせて専用機を導入すれば機械コストも増加する。そこで、水稲(乾田直播)、小麦および大豆の播種作業に汎用的に使用でき
るロータリシーダを開発し、作業工程の省略と高能率化を図るとともに、開発機の導入による規模拡大の効果を検討する。

 

成果の内容・特徴

  • 開発機はロータリで砕土しながら施肥、播種を同時に行い、水稲、小麦および大豆の播種に適用できる作業機である。耕
    うん部は逆転ロータリ方式で、従来のロータリに比べて小径の耕うん爪を用いて耕深を5cmに浅く設定したことに特徴がある。また、施肥・播種装置は、条間
    20cmの水稲乾田直播・小麦用と、覆土前鎮圧方式を用いて条間66cmで播種する大豆用を交換して使用する(図1)。
  • 開発機は慣行のロータリシーダ(作業幅2m、耕深12cm)に対して作業幅が2.8mに拡大するが、浅耕により所要動力は同等(走行速度0.8m/sで57PS(42kW))である。乾田直播では作業幅が広いことから作業能率が高く、慣行体系に比べて作業時間を28%短縮できる。また、小麦および大豆の播種においては、開発機を用いた体系は砕土と施肥・播種作業を同時に行うことから慣行体系に比べて作業工程が少なく、作業時間を17∼32%短縮できる(表1)。
  • 開発機は慣行体系と同等の砕土性が得られる。また、開発機を用いて播種した水稲および大豆は慣行体系と同等かそれ以上の出芽率と収量が得られる(表2)。
  • 慣行ロータリシーダを汎用ロータリシーダに置き換えることにより乾田直播の作付面積が大幅に増え、春まき小麦の初冬播き、大豆の田植え後播種栽培等も増加 することから、転作率が50%の条件で経営の限界規模が6ha拡大する。これは、開発機の導入により作業能率が向上し、作物間の労働競合が緩和されること によるもので、10a当たりの労働時間が短縮され、現行の助成金水準(5万円/10a)を前提にすると所得は155万円増加する(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 開発機は70PS(51kW)以上のトラクタに装着する。
  • 水稲・小麦仕様と大豆仕様の交換および調整には2人で半日程度要する。
  • 水稲乾田直播、春まき小麦初冬播き、大豆田植え後播種が導入可能な地域を想定し、小麦、大豆は現行の価格制度および機械購入の50%補助を前提に試算したものである。
  • 開発機の製作費は250∼300万円程度で、2006年より市販化の予定である。

平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分

「稲麦大豆に適用できる汎用ロータリシーダを用いた播種技術と導入効果」(指導参考)

 

具体的データ

図1 汎用ロータリーシーダの外観と主要諸元

 

表1 汎用ロータリーシーダを用いた新体系と慣行体系の作業時間

 

表2 汎用ロータリシーダの播種性能

 

表3 新体系及び慣行体系の限界規模における作付け面積と所得の試算結果

 

その他

  • 研究課題名: マルチシーディング技術を基幹とする大規模稲・麦・大豆水田輪作体系の実証
  • 課題ID: 04-01-04-01-03-05
  • 予算区分: 交付金プロ(マルチシーディング)
  • 研究期間: 2001∼2005年度
  • 研究担当者: 大下泰生、坂本英美、辻博之、君和田健二、渡辺治郎、仁平恒夫、湯川智行