SSRマーカーによるトウモロコシ自殖系統の遺伝子型のプロファイリング
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要約
SSRマーカーにより推定したトウモロコシ自殖系統間の近縁度に基づくトウモロコシ自殖系統の遺伝子型のプロファイリングにより、自殖系統間の近縁関係を把握できる。プロファイリングの情報は、自殖系統の系列分けおよび交配組合せの選定に有用である。
- キーワード:トウモロコシ、プロファイリング、自殖系統、SSR、組合せ能力、飼料作物育種
- 担当:北海道農研・作物開発部・トウモロコシ育種研究室
- 連絡先:電話011-857-9317、電子メールhenoki@affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・作物、畜産草地、作物・生物工学
- 分類:科学・普及
背景・ねらい
わが国のトウモロコシ育種では、デント種系列とフリント種系列の間の雑種強勢を利用した自殖系統間のF1の育成が基本となっている。遠縁な自殖系統間のF1組合せほど雑種強勢が強く発現して多収なF1が得られる可能性が高まることから、多収なF1品種を効率的に育成するためには自殖系統間の近縁関係を把握することが重要である。
そこで、プロファイリング(大量のデータをデータベース化し対象物の特徴づけを行う)の考え方を応用し、染色体上に偏りなく分布する60個のSSRマー
カーによる多型情報をデータベース化して、自殖系統間の近縁関係を推定することにより、各系統の特徴づけを行う。また、このプロファイリングにより推定し
た系統間の近縁度と収量関連形質の特定組合せ能力との関係を解析し、雑種強勢が強く発現するF1組合せの選抜法を開発する。
成果の内容・特徴
- 60個のSSRマーカーによる多型情報に基づき、トウモロコシ自殖系統のプロファイリングを行う(図1)。プロファイリングを利用することで、トウモロコシ自殖系統の詳細な近縁関係を把握できる(表1)。
- このプロファイリングでは、各自殖系統について、デント種系列とフリント種系列のそれぞれと近縁なゲノム領域の割合を推定でき、デント種×フリント種の
ヨーロッパF1品種に由来する自殖系統の系列分けが行える。この系列分けの結果は、寒地向けのデント種系列とフリント種系列のF1組合せでは、雑種強勢が
より強く発現し乾物総重が高くなる(To119)、絹糸抽出期が早くなる(Ho83およびTo132)特徴とよく一致する(表2)。
- このプロファイリングで推定された近縁度は、各種収量関連形質の特定組合せ能力と有意な相関(r=-0.38∼0.60)を示し(表3)雑種強勢が強く発現するF1組合せを選定するための有用な情報となる。
成果の活用面・留意点
- 育成自殖系統の組合せ能力検定のためのテスターの選択および自殖系統育成のための母材選定に活用できる。
- 官民共同育種の効率化を図るため、プロファイリング情報は育成自殖系統の民間公開に併せて提供する。また、特定組合せ能力に優れるF1組合せを選定するため、民間育成自殖系統のプロファイリングを受託する予定である。
- 異系列間組合せでは、プロファイリングで推定された近縁度による特定組合せ能力の予測精度は低い。
具体的データ




その他
- 研究課題名:
分子マーカーによる飼料用トウモロコシ雑種強勢推定法の開発
- 課題ID:
04-08-02-*-07-05
- 予算区分:
交付金
- 研究期間:
2001∼2005年度
- 研究担当者:
榎宏征、濃沼圭一、三木一嘉
- 発表論文等:
1) Enoki et al. (2002) Theor. Appl. Genet. 104(8):1270-1277
2) Enoki et al. (2005) Breed. Sci. 55(2):135-140