自律機能付きトラクタによる高精度往復直進作業システム

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要約

トラクタを改造し、GPSとジャイロを利用した自律機能を付加することにより、圃 場の区画と作業幅に応じて自動で作業経路を生成し、高精度な往復直進作業が可能な自律作業支援システムである。次の工程への侵入、作業機の上げ下げ、 PTOの入切も自動で、オペレータはエンジン回転数や変速比を調整するだけで作業に専念できる。

  • キーワード:自律走行、自動作業、GPS、ジャイロ、ガイダンス、ナビゲーション、トラクタ、精密農業
  • 担当:北海道農研・総合研究部・農業機械研究室
  • 連絡先:電話011-857-9265、電子メールkeich@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・総合研究、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

農業人口の減少が進み、熟練作業者の不足が深刻化している北海道の大規模圃場を対象として、トラクタに直進走行と等畝間隔、畝間走行が自動で行えるGPS とジャイロを利用した自律走行機能やナビゲーションシステムを付加して、未熟練者でも簡単な操作で耕うん、施肥・播種等、管理などの作業を高精度に行える 自律作業支援システムを開発し、大幅な労力の軽減と能率の向上を図る。

成果の内容・特徴

  • トラクタのパワーステアリング、スロットル、前・後進・停止、作業機の上げ下げ、PTO入切がPCから制御でき(図1、2)、トラクタに搭載したGPSとジャイロ(FOG)により、圃場内の位置、方向、姿勢を認識して、往復直進作業、転回が自動でできる。
  • 圃場の4隅の端点、作業幅、GPS∼作業機中心、最小旋回半径をあらかじめ作業ファイル、あるいはメニュから入力すると、図3のように端点No1、2を基線として等間隔の作業幅で走行経路を生成し、自動転回して往復作業を行うことができる。トラクタ単体での最小旋回半径は4.5mで、転回スペースは8m以上必要である。
  • GPSの衛星配置などにより、位置情報の精度が劣ったときには、復帰するまで停止しており、誤作業を防げる。走行軌跡や作業状況を自動記録し、作業の確認ができる(図4)。
  • マニュアルと自動の切り替えがボタン一つで可能で、自動走行中もエンジン回転数の調整や作業機上下位置などもマニュアルで調整でき、作業者の意志を優先で きる。転回後、生成された経路に一番近い経路を自動で認識し、作業機の上げ下げとPTO入切を自動で行い、コンピュータで自動生成した経路に沿って直進作 業する。
  • RTK-GPSを搭載したときの作業精度は、横方向変異で最大10cm以内(R.M.Sでは5.2cm)である(図4)。走行速度は10km/hまで対応可能である。センサの信号取り込みと制御は10Hzで行っている。
  • プラウ耕うん作業での作業速度は2.7km/h、転回時間35sec、真空播種機による小麦の施肥・播種作業では、エンジン回転数1200rpm、作業速度3.0km/h、転回時間45secで作業幅の変動10cm以内での作業が可能であった。

成果の活用面・留意点

  • 畝間隔が一定で高精度な直進作業が可能で、播種作業の場合、播種条が直線となり、その後の機械除草等の管理作業が容易になる。作業状況、走行経路を自動記録できるため、精密な圃場管理に利用できる。
  • 直進走行のためのハンドル操作が不要になり、作業状況を監視できる。防除、肥料散布にも利用できる。
  • GPSは、作業目的の精度に合わせて、高精度RTK-GPSや1m程度の精度のDGPSなどと入れ替えることができる。
  • 安全のため、オペレータが乗車していることが前提である。

具体的データ

図1 自律走行トラクタの制御システム

 

図2 自律セミクローラトラクタによるプロウ耕作業

 

図3 往復直線作業経路の作成方法

 

図4 小麦播種作業における作業軌跡

 

その他

  • 研究課題名: 寒地の大規模圃場における自律型高精度機械作業技術の開発
  • 予算区分: 交付金
  • 研究期間: 2001∼2005年度
  • 研究担当者: 井上慶一、水島 晃(現米国Jhon Deer社)、村上則幸、宮浦寿美
  • 発表論文等: Inoue et al.(2004):A Modeling of a Movement of a Semi- crawler Tractor and an Adaptive Operational Steering Control, 348-359,ATOE