乳牛の初産分娩月齢早期化は乳生産性と繁殖性を低下させない
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要約
現代の育成牛では初産分娩を24ヶ月齢以降に遅くしても乳量は増えず、初産後の繁殖性は低下する。受胎時で370kg(分娩後で
560kg)程度の体重があれば、授精開始を12ヶ月齢に早めても3産までの乳生産性と繁殖性に影響しない。授精開始時期の体重は、簡易体重推定器具で簡
便かつ迅速に把握できる。
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キーワード:家畜繁殖、乳用牛、育成、初産分娩月齢、乳生産性、繁殖性、産次
- 担当:北海道農研・畜産草地部・家畜生理繁殖研究室
- 連絡先:電話011-857-9268、電子メールsaka99@affrc.go.jp
- 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地、共通基盤・総合研究
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
乳量の増加に伴い、乳牛の体格は向上してきているが、平均初産分娩月齢は26∼27ヶ月とほとんど変わっていない。初産分娩を早め
ることにより、育成コストの削減が期待できるが、乳量の減少、繁殖性の低下あるいは初産時の難産等への危惧から、実現していない。そこで、北農研で生産さ
れた過去の育成牛について、初産分娩月齢と生産性および繁殖性について調べるとともに、現在の育成牛を用いて、12ヶ月齢からの授精開始の影響を調べる。
さらに、授精開始の目安として重要な、体重を簡易推定する器具の実用性を検討する。
成果の内容・特徴
- 1980年代までの育成牛では初産月齢が遅くなると、初産後の乳量も増える傾向にある。1990年代以降の育成牛では、初産月齢が24ヶ月以上では乳量に影響せず、初産後の空胎日数は、月齢が大きくなると延長する(図1)。
- 日本飼養標準にしたがい、放牧期間以外は基本的に個別給餌すると、12ヶ月齢までの平均日増体量は約890gで、体
重は約370kgとなる。授精開始を12ヶ月に早めても、分娩前体重は600kgを超え、分娩後体重は560kg程度となり、初産時の分娩難易度は15ヶ
月開始群と差はない。また、初産後の繁殖機能回復および3産までの分娩間隔も2群間に差はなく、早期化の影響はない(表1)。
- 授精開始を12ヶ月に早めても、3産までの産次ごとの乳量に差はない(図2)。また出生から3産搾乳終了までの、1日あたり平均乳量は12ヶ月開始群で16.6kgと、15ヶ月開始群よりも1.1kg多く、乳生産性に問題はない。
- 一人で操作できる、寛幅から体重を推定する器具(ヒポメーター)は、授精開始基準体重を含む300kg以上の階層では、体重推定尺と同等の精度を有し、測定に要する時間は約半分である。本器具は簡便かつ迅速に育成牛の体重を推定できる(表2)。
成果の活用面・留意点
- 乳牛の初産月齢を下げる際の目安(受胎時370kg、分娩後560kg)として活用できる。
- 季節繁殖化に必要な、24ヶ月齢以内での初産分娩を可能とする。
- ヒポメーターは米国製の輸入品である。
具体的データ


その他
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研究課題名:
季節繁殖牛群へ転換するための条件解明および手法の確立
- 課題ID:
04-05-01-*-12-05
- 予算区分:
集約放牧
- 研究期間:
2003∼2007年度
- 研究担当者:
坂口 実、青木真理、高橋芳幸(北大)、高橋正樹(富山県)
- 発表論文等:
1) 鈴木ら (2002) 北海道畜産学会報 44: 65-70
2) Sakaguchi et al. (2005) Anim Sci J 76(5): 419-426
3) 坂口ら (2006) 日本畜産学会報 77(1): 89 -93