膜分離活性汚泥法によるパーラー・パドック排水の浄化

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要約

膜分離活性汚泥法によってパーラー排水とパドック排水の混合汚水を処理した場合、処理水のBOD、浮遊物質、大腸菌群数は低温時で も安定的に小さくなる。曝気槽と嫌気槽とのあいだを循環させる汚泥の日総量と日処理水量との比が大きいほど窒素およびリンの除去率は大きくなる。

  • キーワード:活性汚泥法、中空糸膜、パーラー排水、パドック排水、家畜ふん尿
  • 担当:北海道農研・畜産草地部・家畜管理研究室
  • 連絡先:電話011-857-9307、電子メールsatoy@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

パーラー排水、パドック排水などの低濃度汚水を圃場散布するためには大型の貯留施設および長時間の散布作業が必要となる。特に寒地 においては家畜排泄物等を圃場還元できる期間が限られるため、施設の大型化と作業の集中は顕著となる。そこで、中空糸膜を利用した膜分離活性汚泥処理方式 の汚水処理施設(図1)でパーラー排水とパドック排水とを合流式で浄化処理し放流する技術について検討した。

成果の内容・特徴

  • 処理水のBOD、浮遊物質、大腸菌群数は安定的に小さく、処理施設に流入する汚水の性質や季節による曝気槽の水温に左右されない(表1)。これは公称値0.4μmの孔隙を持つ中空糸膜を通過させることによって浮遊物質のほとんどが取り除かれ、浮遊物質に起因するBODも同時に除去されるためである。大腸菌の径は1μm程度であり中空糸膜をほとんど通過できないため、殺菌処理なしで放流できる。
  • 処理施設に嫌気槽を設置し曝気槽とのあいだを循環させることによって生物的に窒素およびリンの除去を行った場合、曝 気槽と嫌気槽との間を循環させる汚泥の日総量と日処理水量との比(循環率)を大きくするほど(検討は1000%までの範囲)窒素およびリンの除去率は大き くなる(表2)。曝気用ポンプに比較して循環用ポンプの消費電力は小さいため、循環率は処理施設全体の消費電力にはあまり影響しない。
  • 循環率が100%付近でほぼ一定であれば、流入汚水のBOD/全窒素が大きいほど窒素の除去率は大きい(図2)。これは、脱窒の際に有機物が必要となるためにBODが大きい時に除去率が大きくなるものと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 年間汚水量約5000m3(そのうちパーラー排水が約1600m3、パドック排水が約3600m3)を日処理量10∼19m3で処理しながら得られた結果である。汚水の全窒素は110∼280mg/l、全リンは15∼36mg/l、活性汚泥槽のMLSSは7000∼12000mg/lであった。
  • 処理施設の処理水量を急激に変化させないことや、曝気槽が低温な時期に処理水量を低減させるなどの点に留意し、処理水の吸引時に膜にかかる圧力を上昇させないようにすれば(本事例では0.03MPa未満)、1年程度は膜の洗浄をせずに稼働可能である。
  • 発生する余剰汚泥量は最大で処理水量の5%程度であり、夏期に少なく冬期に多い。余剰汚泥槽は冬期間貯留できる容量を確保する。

具体的データ

図1 膜分離活性汚泥処理施設のフロー図

 

表1 膜分離活性汚泥処理施設に流入する汚水と処理水のBOD・浮遊物質・大腸菌群数

 

表2 循環率と窒素およびリン除去率

 

図2 流入汚水のBOD全窒素と窒素除去率

 

その他

  • 研究課題名: 寒地の乳牛舎における家畜排泄物処理の実規模実証研究
  • 課題ID: 04-05-03-*-08-01
  • 予算区分: 委託「エコシステム」
  • 研究期間: 2000∼2001年度
  • 研究担当者: 佐藤義和、中村正斗、矢用健一、原 宏一(オリオン機械)、西原良一(オリオン機械)