細断型ロールベーラを活用した高水分トウモロコシの排汁抑制技術

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要約

高水分トウモロコシに配合飼料を混合して細断型ロールベーラでサイレージ調製すると、貯蔵中の排汁損失が大きく抑制され、高水分トウモロコシのみのロールベールサイレージと異なり冬季でも凍結しにくい。発酵品質や嗜好性も良好である。

  • キーワード:飼料作物、サイレージ、乳用牛、細断型ロールベーラ
  • 担当:北海道農研・畜産草地部・飼料評価研究室
  • 連絡先:電話011-857-9236、電子メールaokiya@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

寒冷地における飼料用トウモロコシの収穫適期は短く、夏季の冷涼な天候の影響で適期である黄熟中後期に達する前に収穫せざるを得ないことが多い。この高水分材料をサイレージ調製すると、貯蔵中に著しい排汁が生じ、養分の損失や周辺環境への悪影響が懸念される。その対応として、高密度で梱包できるため高品質サイレージが調製できる市販の細断型ロールベーラを活用して、材料投入時に配合飼料を混合し水分を調整してからサイレージ調製すれば、排汁損失が抑制できかつ高品質飼料が調製できると期待される。そこで本法の排汁抑制効果と飼料特性を解明し、高水分トウモロコシの排汁抑制技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 細断型ロールベーラの定置作業において、トウモロコシと市販乳牛用配合飼料を交互に数回にわけて投入しロール成形後、フィルム被覆してサイレージ調製する技術である。
  • 本技術によって糊熟期に収穫した水分78%のトウモロコシに原物重で15%程度の配合飼料を加えて調製すると(混合区)、水分は67%に低下し、貯蔵2か月間における排汁損失は高水分トウモロコシのみの細断ロールベールサイレージ(対照区)に比べて大きく抑えられる(図1)。
  • 発酵品質はpHが3.8、乳酸含量が原物重当たり1.4%などと良好である(表1)。また高水分トウモロコシの細断ロールサイレージでみられる冬季の著しい凍結は認められず、開封時の取扱いが困難になることや解凍により栄養価が低下するという問題はない。
  • 配合飼料と比較的均質に混合されるが、成分や発酵品質はベール内である程度ばらつく(図2)ので、ロール全体を攪拌してから給与する。好気的変敗(実験室内における温度上昇)の程度は対照区より著しいが、開封直後の嗜好性は良好な傾向がある (表2)。
  • 以上のように、本技術によって高水分トウモロコシからの排汁損失が大きく抑制され、冬季の凍結を防止しつつ、発酵品質や嗜好性の良好な飼料が調製できる。

成果の活用面・留意点

  • 本技術によるサイレージは、開封して必要な飼料資材と混合するだけで給与できる一次的なTMRサイレージと位置づけられ、流通に向く技術となりえる。
  • 本手法を大規模酪農家に適用するには、市販の細断型ロールベーラより大型の機種の開発が望まれる。
  • 嗜好性は、配合飼料の種類や混合比、季節などの要因で変化する可能性がある。

具体的データ

図1.糊熟期トウモロコシへの配合飼料混合の有無と細断ロールベールサイレージの排汁損失 表1.糊熟期トウモロコシへの配合飼料混合の有無と細断ロールベールサイレージの発酵品質

 

図2.トウモロコシへの配合飼料混合による細断ロールベールサイレージ内の乾物率およびpHの分布表2.糊熟期トウモロコシへの配合飼料混合の有無と細断ロールベールサイレージの嗜好性

 

その他

  • 研究課題名:寒冷地におけるサイレージ用トウモロコシの排汁低減型高品質調製技術の開発
  • 課題ID:04-05-02-01-13-05
  • 予算区分:委託プロ(ブラニチ3系)
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:青木康浩、大下友子、秋山典昭、野中和久、小酒井貴晴、久米新一