ダイズの田植え後播種によるダイズわい化病の感染回避

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要約

ダイズわい化ウイルス保毒ジャガイモヒゲナガアブラムシのダイズ圃場への飛来個体数は飛来初期に多く、その後急速に減少する。田植え後播種では早播きや標準播きよりも遅く出芽して保毒虫飛来のピークを回避するので、ダイズわい化病の感染が軽減される。

  • キーワード:ダイズ、わい化病、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、保毒虫、飛来時期、田植え後播種
  • 担当:北海道農研・総合研究部・大豆研究チーム、生産環境部・虫害研究室、ウイルス病研究室
  • 連絡先:電話011-857-9280、電子メールkonishi@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境、共通基盤・病害虫(虫害)、総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ダイズわい化病はジャガイモヒゲナガアブラムシによって媒介され、大幅な減収をもたらすウイルス病である。ウイルスの供給源はク ローバ類であり、春先にそこでウイルスを獲得したアブラムシがダイズ圃場に飛来して吸汁することでダイズへの感染がおこる。北海道の田作大豆では標準播き が田植え作業と競合するため早播きが一般的であるが、播種期間が限定されて作業が短期間に集中する。これを改善するために、生育の早い「ユキホマレ」を用 いて田植え後に遅播きすることにより、収量の低下がなく中生品種並みの熟期が得られる田植え後播種栽培が確立された(平成15年度研究成果情報)。田植え 後播種では早播きに比べてダイズわい化病の感染を軽減できることが示されており、その要因として、遅く出芽することでダイズわい化ウイルス保毒アブラムシ の飛来を回避していると考えられている。それを実証するために、ジャガイモヒゲナガアブラムシ有翅虫及びその内の保毒虫のダイズ圃場への飛来消長とダイズ 出芽時期の関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ジャガイモヒゲナガアブラムシは、5月末から6月にダイズ圃場へ飛来する。また、ダイズわい化ウイルス保毒虫の飛来も同様の推移を示す(図1)。保毒虫率は飛来初期が最も高く、その後減少していく(図2)。このことから、保毒虫の飛来数がより飛来初期に集中していることがわかる。
  • 2004年は田植え後播種によってダイズの出芽が早播きより17日、標準播きより7日遅くなり、保毒アブラムシの飛来を早播きの5%未満、標準播きの35%程度まで回避している(表1)。それを反映して、わい化病感染株率は早播きで27%、標準播きで12%であるのに対して田植え後播種では約3%と顕著に低い(図3)。2005年には、田植え後播種の出芽日は早播きより12日、標準播きより8日遅いが、保毒アブラムシの飛来時期が遅れると同時にピークが分散した(図1)ことから、早播きと標準播きの70%程度の飛来を受けている(表1)。圃場での感染株率もそれに対応して、田植え後播種と早播きで約1%、標準播きで1.5%となり、田植え後播種によるわい化病軽減効果は低い(図3)。年次によりわい化病感染率に増減はあるものの、田作大豆で一般的な早播きに比べて田植え後播種では感染率が軽減される(図3)。
  • 田植え後播種による出芽時期が保毒アブラムシの飛来ピークより後になるため、わい化病の感染が軽減される。田植え後播種によるわい化病感染軽減効果の年による違い(図3)は、各年の保毒虫飛来開始期や飛来パターンの違い(図1)で説明できる。

成果の活用面・留意点

  • ダイズわい化ウイルス保毒アブラムシの飛来ピーク時期からわい化病発生率を予察するモデルを開発するための基礎データになる
  • 本成果は、札幌市羊ヶ丘で得られた結果に基づいている。

具体的データ

図1.ダイズ圃場におけるジャガイモヒゲナガアブラムシ飛来個体数の推移 図2.ダイズ圃場に飛来したジャガイモヒゲナガアブラムシのダイズわい化ウイルス保毒虫率の推移

図3.羊ヶ丘ダイズ圃場におけるわい化病発病株率

表1.早播き、標準播き、田植え、後播種の播種日、出芽日と出芽後に飛来したダイズわい化ウイルス保毒ジャガイモヒゲナガアブラムシのトラップ当たり総個体数

その他

  • 研究課題名: 大豆の密植狭畦遅まき栽培を中軸とした新栽培システムの確立
  • 課題ID: 04-01-04-02-04-05
  • 予算区分: 交付金
  • 研究期間: 2002∼2005年度 研究担当者: 小西和彦、伊藤清光、福本文良、眞岡哲夫、渡辺治郎、大下泰生、辻 博之