蛍光X線分析装置によるばれいしょでん粉のリンの簡易定量法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

蛍光X線分析装置を用いることで、ばれいしょでん粉中のリン含量を短時間かつ高精度で定量できる。

  • キーワード:ばれいしょでん粉、リン含量、蛍光X線分析装置、簡易定量法
  • 担当:北海道農研・畑作研究部・品質制御研究チーム、ばれいしょ育種研究室
  • 連絡先:電話0155-62-9278、電子メールnoda@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・農産利用
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ばれいしょでん粉の特性は、基本的には、リン含量に最も大きく左右されると考えられ、例えば、リン含量の高いものは粘度が高い。一方、でん粉中のリン含量を迅速に定量する方法はこれまでに確立されていない。 そこで、 蛍光X線分析装置を用いたばれいしょでん粉中のリン含量の簡易定量法について検討する。

成果の内容・特徴

  • 蛍光X線分析装置は、試料にX線管球から発する1次X線を照射し、試料中の元素から発生する蛍光X線の強度を解析することにより元素の種類や含有量を簡易にで測定できる(図1)。しかし、本装置をばれいしょでん粉の品質評価に適用した例はない。
  • 従来の化学分析によるリン含量の実測値とばれいしょでん粉の錠剤化試料中のリンから発生する蛍光X線の強度から求めたリン含量の推定値との間に、極めて高い相関があり(図2)、本装置は、ばれいしょでん粉中のリン含量の定量に有効である。
  • 従来の化学分析によるでん粉中のリン含量の定量の際は、試料の湿式灰化が必要で、この操作には約1日要する上に危険 がともなう。本法では、粉末プレス機によるでん粉の錠剤化試料の調製時間は約300秒、分析時間は200秒といった短時間での測定が可能であり、安全かつ 効率的である。
  • 本法により、535種類のばれいしょでん粉中のリン含量を調べた結果をみると、図3のように308-1244 ppmの間に広く分布し、平均値 は716 ppmである。

成果の活用面・留意点

  • ばれいしょでん粉には遊離のリンがほとんど含まれていないので、本法ではグルコース結合性リンを測定している。
  • 低リンまたは高リン含量のでん粉を含有するばれいしょ育種に役立てることが可能である。
  • でん粉製造時における品質検査に適用できる。

具体的データ

図1 蛍光X線分析装置のしくみ

 

図2 リン含量の実測値と蛍光X線分析装置による推定値

 

図3 蛍光X線分析装置によって測定した535種類のばれいしょでん粉のリン含量分布

 

その他

  • 研究課題名:原料馬鈴薯の選定及び高度リン酸化澱粉・澱粉粕の特性解明と高度利用技術の開発
  • 課題ID:04-04-03-*-17-05
  • 予算区分:異分野融合(農生研機構)
  • 研究期間:2003∼2007年度
  • 研究担当者:野田高弘、瀧川重信、橋本直人、津田昌吾、森 元幸
  • 発表論文等:Noda et al. (2006)Food Chem., 95, 632-637.
    特願2004-247482.