体細胞数が多い分房は乳房汚染により炎症反応が亢進し易い

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

乳汁1ml当たりの体細胞数が概ね10万以上の分房は搾乳後の乳房汚染により炎症反応が亢進し易い。また、体細胞数が多い分房は乳房汚染前から乳汁中生菌数が多く、マクロファージの食菌能が亢進している。

  • キーワード:飼育管理、乳用牛、乳房炎、体細胞数、生菌数、白血球食菌能
  • 担当:北海道農研・畜産草地部・家畜管理研究室
  • 連絡先:電話011-857-9307、電子メールmasaton@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畜産草地、畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

牛床の汚れなどにより、牛の横臥時の乳房の汚染が著しいと、乳頭口からの細菌の侵入による乳房炎発症のリスクが高くなる。しかし、 このような場合に乳房炎を発症し易い個体や分房の要因については不明の点が多い。そこで、飼養環境悪化による乳房炎発症のモデルとして、搾乳後における乳 房汚染による分房別体細胞数、生菌数、乳汁中白血球食菌能の経日変化を調べることにより、乳房炎を発症し易い個体や分房の要因を明らかにする。乳房汚染は 搾乳後の乳頭ディッピングを行った後に、乳頭および乳頭口を含む乳房全体に生糞を塗布する。

成果の内容・特徴

  • 全ての分房でPLテスト陰性を確認した搾乳牛16頭中、乳汁1ml当たりの体細胞数が10万以上であった7頭7分房のうちの4頭4分房において、乳房汚染後2日ないし3日目に体細胞数が70万以上まで増加した(図1)。このとき、乳汁中生菌数は体細胞数の増加にやや先行し、乳房汚染後1∼3日で増加する(図2)。しかし、体細胞数が10万未満であった分房では、体細胞数あるいは生菌数の著しい増加は起こらない(図1、図2)。
  • 分房乳の体細胞数と生菌数との間に正の相関(p<0.001)がある(図3)。
  • 分房乳のマクロファージを認識するCD14抗体陽性細胞食菌能インデックスと対数変換した体細胞数との間に正の相関(p<0.01)がある(図4)。
  • 以上の結果から、体細胞数が多い分房は乳房汚染前から乳汁中生菌数が多く、マクロファージの食菌能が亢進しているが、新たな感染に対処しにくい状態にあり、乳汁1ml当たりの体細胞数が概ね10万以上の分房は搾乳後の乳房汚染によって炎症反応が亢進し易いと判断される。

成果の活用面・留意点

  • 乳房炎を予防するため、体細胞数の多い乳牛では、乾燥した清潔な敷料を毎日交換するなど管理に注意を払うとともに前搾り乳のPLテストなどの検査を徹底することでバルク乳の乳質向上が図れる。
  • 乳検の個体成績の体細胞数は4分房の合乳の数値であるため、1分房のみ体細胞数が多い場合には、当該分房乳の体細胞数は合乳の数値の概ね4倍となる。
  • フリーストール牛舎飼養でのデータである。

具体的データ

図1 乳房汚染後の乳汁中体細胞数(SCC)の経日変化

 

図2 乳房汚染後の乳汁中生菌数の経日変化

 

図3 乳房汚染前の乳汁中生菌数と体細胞数(SCC)との相関

 

図4 乳房汚染前の乳汁中CD14抗体要請細胞食菌能インデックスと対数変換した体細胞数(SCC)との相関

 

 

食菌能インデックス:乳汁からの白血球分離・FITC標識オプソニン化ザイモザン貪食反応・免疫染色後、フローサイトメーターにより、CD14抗体陽性細胞について食菌能を有する細胞の割合(%P)・その平均蛍光強度(Mean F)を求め、 %P x Mean F/100で計算。

その他

  • 研究課題名:フリーストール牛舎における施設環境と飼養管理の改善による予防技術の開発
  • 課題ID: 04-05-03-02-06-05
  • 予算区分: 乳房炎
  • 研究期間: 2001∼2005年度
  • 研究担当者: 中村正斗、矢用健一、伊藤秀一、森岡理紀、中島恵一