テンサイ黒根病に対する簡易抵抗性検定法

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要約

試験管に播種し人工気象室内で4週間育生した植物体に、菌体ディスクを湛水条件下で接種することにより、テンサイ品種・系統の黒根病抵抗性検定が9週間で、簡便に、省スペースで、周年実施できる。

  • キーワード:テンサイ、黒根病、簡易抵抗性検定法
  • 担当:北海道農研・畑作研究部・環境制御研究チーム
  • 連絡先:電話0155-62-9276、電子メールstake@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境、共通基盤・病害虫(病害)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

菜根を腐敗させて甚大な被害をもたらすテンサイ黒根病に対する防除対策として、抵抗性品種の育成が強く求められている。抵抗性品種 の育成には抵抗性検定法が必要であるが、圃場試験では一年に一度しか実施できず、また、従来のポット試験による検定でも多大な労力と試験面積を必要とす る。そこで、迅速、省力、省スペースで周年実施可能な黒根病の抵抗性検定法の開発を試みる。

成果の内容・特徴

  • 園芸粒状培土をつめた試験管(径24mm、長さ130mm、底部に径5mmで長さ40mmの配水管付き)に播種し、人工気象室(照明時25°C,暗黒時20°C,16時間日長)内で育生した植物体を、接種に供試する(図1)。育生期間中は、播種3週間後から、週に1度500倍に希釈したハイポネックス液5-10-5(ハイポネックスジャパン)を1試験管当たり5mlずつ施用する。
  • 黒根病菌(Aphanomyces cochlioides)の接種は、ブドウ糖加用ジャガイモ寒天培地で培養した菌叢の最外層より打ち抜いた菌体ディスク(直径8mm)を上記試験管に2個 ずつ加え、約10mlの蒸留水で湛水状態にすることにより実施する。この方法により、24時間後には遊走子が約1x104個/ml安定的に形成される。その後は排水して、人工気象室内で植物体の育生を継続する。
  • テンサイの育生期間を合計9週間として、時期を変えて遊走子を接種すると、抵抗性弱品種のカブトマルでは、播種後6, 7週間の接種ではほとんど発病しないのに対し、播種後4, 5週間の接種では顕著な内部腐敗が観察される(図2)。また、テンサイは湿害に弱いため、本接種法による腐敗が湿害に起因する可能性があるが、播種後4週間の接種では、菌体ディスクなしではほとんど腐敗しない(図3)。
  • そこで、接種時期を播種後4週間にして、圃場試験で抵抗性「弱」、「中」、「強」にグループ分けされた品種・系統の抵抗性を検定すると、「弱」と「中∼強」グループ間で有意な抵抗性の差異が認められる(図4)。以上のことから、本法により、テンサイ品種・系統の黒根病抵抗性の検定を、9週間で、簡便に、省スペース(28 x 38 cm2に最大50個体)で、しかも周年実施できる。

成果の活用面・留意点

  • 本室内接種法を用いることにより、テンサイ黒根病抵抗性品種・系統の育成が加速される。また、本法は黒根病に対する薬剤検定にも利用可能である。
  • 本検定法では、湛水状態で接種するため、菌体ディスクなしでも腐敗しやすいユキヒノデ等の品種は、圃場試験の検定結果より抵抗性が低く評価される場合がある。

具体的データ

図1 配水管付き試験管で育成したテンサイ

 

図2 接種時期と黒根病発病指数との関係

 

図3 接種区(菌体ディスク添加)と無接種区(湛水状態のみ)における発病指数の比較

 

図4 圃場試験で異なる抵抗性程度を示す7品種・系統の室内検定法による黒根病発病指数の比較

 

その他

  • 研究課題名: テンサイ黒根病に対する抵抗性簡易検定法および被害軽減技術の開発
  • 課題ID: 04-04-02-01-19-05
  • 予算区分: ブラニチIV系
  • 研究期間: 2003∼2005年度
  • 研究担当者: 竹中重仁、小林有紀、石川枝津子