調理適性に優れた、シストセンチュウ抵抗性ばれいしょ新品種「はるか(旧系統名 北海94号)」

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要約

ばれいしょ「はるか」は白肉で、食味が良く、水煮適性が優れ、サラダおよびコロッケ加工適性もある中生の生食用系統である。目の周りが赤い外観を呈し、「男爵薯」よりも多収で、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性がある。青枯病にもやや強い。

  • キーワード:ばれいしょ、ジャガイモ、生食、調理加工、ジャガイモシストセンチュウ、青枯病
  • 担当:北海道農研・寒地地域特産研究チーム、バレイショ栽培技術研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseikajouhou@ml.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畑作、作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

一般家庭の外食化と調理簡素化に伴い、家庭調理用のばれいしょの消費が落ち込み、生食用ばれいしょの栽培面積は年々減少している。さらに、ジャガイモシストセンチュウの汚染地も年々拡大しており、「男爵薯」、「メークイン」などは本線虫に対する抵抗性を持っていないため、ばれいしょを取り巻く状況は非常に厳しい。そこで、ばれいしょの家庭内消費を拡大し、ばれいしょの栽培面積の減少に歯止めを掛けるとともに、本線虫の汚染地域の拡大を防ぐため、良食味で調理適性に優れたジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「はるか」は、交配により育成された品種であり、白肉で目の周りが赤い外観が特徴的な多収系統「T9020-8」を母、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有しサラダ加工適性の優れた白肉の品種「さやか」を父とする。
  • 熟期は「男爵薯」よりも遅い中生で、いもは「男爵薯」よりも大粒で、収量は「男爵薯」よりも多く、「さやか」並である。でん粉価は「男爵薯」、「さやか」よりもやや低い(表1)。
  • いもの形は倒卵形で、皮の一次色は白、二次色は淡赤で、目の周りが赤く着色した既存品種と区別性のある外観を呈する。目はやや浅いため、皮が剥き易く、剥皮後の褐変も少ない。いもの内部異常は「男爵薯」よりも少ない。(表2、3、図1)。
  • 「男爵薯」と異なるやや粘質の肉質であり、良食味である。水煮による煮崩れが少なく、水煮適性は「男爵薯」よりも優れる。サラダおよびコロッケ加工適性も有しており汎用性に優れている(表3)。
  • ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有し、青枯病ならびに塊茎腐敗に対してもやや強い抵抗性を有する(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 生食用のばれいしょ市場に新たなメニューとして導入し、北海道のばれいしょ栽培地帯に600haの普及を見込む。
  • 市場販売のみならず、業務用としての用途も見込まれる。
  • 目数が少ないため、種いもを切断する場合は頂芽の位置に十分注意する。
  • PVY-T系統の感染による上位葉の病徴は不明瞭なモザイクであるため採種管理に当たっては注意する。

平成18年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
ばれいしょ新品種候補「はるか」(普及推進)

具体的データ

表 1 生育および収量等試験成績 (平成15-18年、4カ年平均)

表 2 主な特性の概要

表 3 調理特性および病害抵抗性

図1 「北海94 号」の塊茎

その他

  • 研究課題名:寒地における地域特産作物の優良品種の育成及び利用技術の開発
  • 課題ID:311-f
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:1994、1998~2006年度
  • 研究担当者:小林晃、森元幸、高田明子、津田昌吾、向島信洋、高田憲和、石橋祐二(長崎県総農林試)、
                      茶谷正孝(長崎県総農林試)、百田洋二、串田篤彦、植原健人