農薬適正使用のための生産履歴電子化技術

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要約

スキャナ、OCRを用いて手書きの生産履歴を電子化し、インターネット経由でサーバにデータを格納し、ウェブブラウザ上で管理を行うシステムである。先に開発した「農薬適正使用診断システム」との連携に必要な作物コード等の変換機能を有する。

  • キーワード:生産履歴、OCR、電子化、手書き記帳、農薬適正使用
  • 担当:北海道農研・生産支援システム研究北海道サブチーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メールseikajouhou@ml.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・情報研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

平成18年5月末にポジティブリスト制度が施行されたことを受け、農薬使用の厳格化がいっそう進んでいる。これまでに、農薬の適正使用を支援する仕組みとして、「農薬適正使用診断システム」の開発を進めてきた(平成16年度成果情報)。このシステムを利用するには、農薬登録上の作物名(作型等を含む)を正確に把握し、それに対応した形で生産履歴を電子化する必要がある。
そこで、市販のスキャナやOCRソフトを使用して生産履歴を簡便に電子化し、「農薬適正使用診断システム」と容易に連携できる履歴管理システムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、手書きの生産履歴を電子化し管理するウェブシステムである。北海道農業研究センターが先に開発した「農薬適正使用診断システム」と連携して動作する機能を有しているため、農薬の使用適否を即座に検査できる。
  • 生産履歴は、手書き記帳された帳票をスキャナで読み込みOCRソフトによって電子化する。スキャナは、TWAINドライバ対応であれば機種は問わない。OCRソフトは、富士通(株)製のDynaEye Pro V.4.0をカスタマイズして使用する。電子化されたデータは、インターネット経由でデータサーバに転送し格納する。
  • 生産履歴管理システムは、農薬使用履歴のほか耕種概要、生育ステージ、施肥履歴等も同時に格納でき、各種の記帳様式にも対応できる。データベースに格納された生産履歴は、ウェブブラウザを用いて閲覧、編集ができる(図1)。
  • スキャナで帳票を読み取り始めてから農薬の使用適否の検査を終えるまでにかかる所要時間は、生産履歴1件あたり約3分である。
  • 「農薬適正使用診断システム」を利用するには、農薬登録上の作物名(作型等を含む)に対応した作物コードを入力する必要がある。このコード体系は非常に複雑であるため、利用者がそれらをすべて把握するのは困難である。本システムでは、個々の利用者が作物コードを意識することなくシステムを使用できるように、生産現場で通常用いられている作物名と作物コードとを自動的に対応付ける機能を有している(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本システムは、JA等の生産者団体での利用を前提としている。運用にあたってはCGIプログラムが動作可能なウェブサーバを設置する必要がある。
  • 生産履歴を記帳するシートの様式は任意だが、OCRソフトで読み取り、データベースに格納できる形式に変換する機構に関しては、個々にカスタマイズする必要がある。
  • 作物コードの変換機能のルール付けはシステム管理者が行う。また、農薬登録の変更等が生じた場合は随時その変更を反映させる。

具体的データ

図1 ウェブブラウザ上での管理画面

表1 作物コードの対応付け

その他

  • 研究課題名:農産物生産のための生産プロセス作業情報処理技術の高度化による営農技術支援手法の開発
  • 課題ID:222-b
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:伊藤淳士、村上則幸、喜多孝一
  • 発表論文等:伊藤淳士(2006) 農業及び園芸81巻6号664-669