北海道の水稲潜在生産力はオホーツク海高気圧型冷夏では低下しない

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

オホーツク海高気圧による、北海道の晴冷型冷夏では、水稲の潜在生産力(深水管理により障害不稔を回避した場合の乾物生産量)は低下しない。一方、前線や低気圧の影響で天候不順な夏には、日射量が少ないため潜在生産力が低下する。

  • キーワード:オホーツク海高気圧型冷夏、水稲、潜在生産力、天候不順
  • 担当:北海道農研・寒地温暖化研究チーム
  • 連絡先:電話011-857-9260、電子メール seikajouhou@ml.affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・生産環境 共通基盤・農業気象
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

オホーツク海高気圧型の冷夏は、北海道では「晴冷型」と呼ばれ、低温だが晴天の日が多い(太平洋側等を除く)。深水管理により水稲の障害不稔を回避すれば、豊富な日射量を活用した収量確保が期待できる。このことを、北海道農研で2001年~2005年に実施した栽培試験と、そのデータからパラメタリゼーションした生育モデルによるシミュレーション実験(表1)で確認する。

成果の内容・特徴

  • 2003年(冷害年)における北海道農研試験水田の実態については、7月14日から24日にかけて特に低温であったが(平均気温15.6°C)、水温は平均20.6°Cと高く保たれていた。20cmの深水管理を実施したところ、不稔率は15%で玄米収量は582g/m2であった(5年間平均値は583g/m2)。このように、冷害年でも水温は高く、深水管理により障害不稔を低減でき、平年並み収量を確保できる。
  • 水稲の潜在生産力(乾物生産量、冷害年については深水管理により障害不稔を回避した場合の値)を、シミュレーションで再現できる(図1)。
  • 1993年の気象データで計算した潜在生産力の、5年平均値に対する比は96で(図2a右)、北海道の作況指数(40)を大きく上回る。2003年(作況指数73)も同様である(図2c右)。このように、オホーツク海高気圧型冷夏では潜在生産力は低下しない。旬別に見ると(図2a左、c左)、低温による潜在生産力低下はほとんど認められず、一方、日射量の多少が潜在生産力に強く影響している。
  • 2002年夏は前線や低気圧の影響で天候不順であった。このような年は日射量が少ないため潜在生産力が低下する(図2b)。

成果の活用面・留意点

  • 品種ほしのゆめを対象とし、水稲生育モデルPRISMを使用した。
  • 北海道の水稲生産者に、晴冷型冷夏における深水管理の有効性を啓発する根拠となる。
  • 太平洋側等、日射量が少なくなる地域には適用できない。

具体的データ

図1.実測とシミュレーションの比較(2002年と2003年の例)

表1.シミュレーション実験の手順(1993年の例)

図2.潜在生産力(5年平均値との比)

その他

  • 研究課題名:寒地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
  • 課題ID:215 a
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2001~2006年度
  • 研究担当者:鮫島良次、濱嵜孝弘、廣田知良