α-アミラーゼ活性測定による小麦品質安定期の予測方法

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要約

成熟期前の高水分生麦のα-アミラーゼ活性値を約3日間隔で3点程度測定することによって、小麦品質安定開始日(アミロ値が高値で安定する開始日)を簡便に高精度で予測できる。

  • キーワード:小麦、α-アミラーゼ、アミロ値、品質、安定期
  • 担当:北海道農研・パン用小麦研究チーム、富士フィルムメディカル株式会社、静岡製機株式会社
  • 連絡先:電話 011-857-9260、電子メール seikajouhou@affrc.go.jp
  • 区分:北海道農業・畑作
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

北海道の主要な農産物である小麦の品質を高めることは民間流通への移行で益々重視されている。収穫後の小麦の品質を確認、仕分けし良質の小麦を確保する事は重要であるが、収穫前に小麦の品質が安定する時期を予測できれば高品質な小麦の計画的収穫が可能になり更なる小麦品質向上への寄与が期待できる。そこで、本研究では小麦の品質指標の1つであるアミロ値が一段と高い値で安定する時期(小麦品質安定期)の開始時期を成熟期前にα-アミラーゼ活性を測定することにより簡便に予測する方法を開発する。本予測法の開発により、収穫前に小麦品質安定期を簡便に予測することが可能になり、計画的収穫への寄与が期待できる。

成果の内容・特徴

  • α-アミラーゼ活性値は小麦の登熟に従い急激に且つ単調に減少し、一定期間活性の低下がほぼ0の一定値(この低く安定したレベルを「底値」と定義)で推移し、その後降雨などがあれば穂発芽して上昇する。
  • アミロ値には成熟期直後にその値が一段と上昇し一定期間高い値で安定する時期(アミロ値高値安定期)があり、他の要件(例えば小麦水分含量等)が整っていれば、この期間が最適な収穫時期(小麦品質安定期)である。
  • アミラーゼ活性が底値に到達した日(アミラーゼ活性底値到達日)とアミロ値高値安定期開始日とはほぼ一致する(図1)。これより、アミラーゼ活性底値到達日は小麦品質の安定期開始日(アミロ値高値安定期開始日)を表し、前者を推定することで小麦品質安定開始日を予測できる。
  • 小麦の登熟に伴うα-アミラーゼ活性の推移から、アミラーゼ活性底値到達日から約一週間を小麦品質が安定する期間「小麦品質安定期」、その開始日を「小麦品質安定開始日」、前述したこの期間の低い活性値レベルを「底値」と定義する(図2)。
  • 今回開発した成熟期前のα-アミラーゼ活性の測定結果から小麦品質安定開始日を簡便、精度良く予測する方法の概念図と具体的手順を図3、4に示す。
  • 本法により求めた予測小麦品質安定開始日は、実測のアミラーゼ活性底値到達日に良く一致する(図5)。この結果から本法により簡便に高精度で小麦品質安定開始日を予測できる。

成果の活用面・留意点

  • 本方法によれば小麦の成熟期前に小麦の重要な特性であるアミロ値が最高点に達して安定する時期「小麦品質安定期」を従来法(水分低下やフォーリングナンバーからの推定法)に比べ総合的に高精度で簡便に予測する事ができる。
  • 本成績のα-アミラーゼ活性測定による小麦品質安定期の予測方法の適用品種は「ホクシン」、「キタノカオリ」、「春よ恋」の3品種である。
  • 測定時期が早すぎると、子実水分(50%以上)が高すぎて水分の測定誤差が生じる場合がある。

平成18年度北海道農業試験会議における課題名及び区分
「α-アミラーゼ活性測定による小麦品質安定期の予測方法」(研究参考)

具体的データ

図1 アミラーゼ活性底値到達日とアミロ値高値安定開始日との日差の圃場数の分布

図2 アミラーゼ活性推移と小麦品質安定期の模式図

図3 小麦品質安定開始日の推定方法の概念図

図4 小麦品質安定開始日の予測手順

図5 予測小麦品質安定開始日と実測のアミラーゼ底値到達日の日差

その他

  • 研究課題名:実需者ニーズに対応したパン・中華めん用小麦品種の育成と加工・利用技術の開発
  • 課題ID:311-c
  • 予算区分:高度化事業(麦収穫プロ)、基盤研究費
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:山内宏昭、西尾善太、伊藤美環子、田引正、桑原達雄、升田喜士(富士フィルムメディカル(株))、
                      藁科二郎(静岡製機(株))、石津裕之(静岡製機(株))